教育福島0021号(1977年(S52)06月)-022page
るのではなかろうか。
この度の指導要領の改訂で、地元のわらべ歌や民謡を取り上げることが強調されていることは、非常に喜ばしいことである。
指導内容とその教材
日本音楽に限らず、限られた時間数で効果的な指導をするためには、教材の精選が重要なポイントになることはいうまでもない。しかし数多い名曲の中から、わずかな曲を選ぶことは至難なわざだけに、このことがさしあたっての問題となる。私は次のような教材を選んでいる。
巫女舞 (磐梯町本寺)
出雲流神楽 (二本松市原瀬)
1、古代・大和時代
神楽
日本古来の神楽(巫女(みこ)舞・採物(とりもの)神楽)
県内各社の巫女舞や出雲(いずも)流神楽を教材とし、芸能の起源や意義を解く。
2、奈良・平安時代
雅楽
(1)伝来の時期と経路
(2)種類
(3)楽器の種類、特色、特に役割りと演奏順序
(教材)
管弦「平調越天楽」
催馬楽(さいばら)「更衣(ころもがえ)」
「平調越天楽」は旋律が親しみ易く、楽器編成も単純でわかり易い。「更衣」は最もよく演奏され、貴族風な雅楽の特色がよくあらわれている。
声明
(1)声明の種類
(2)後世の語り物音楽への影響
(教材)
天台・真言声明
日本音楽は声楽曲が多く、声明の影響は大きい。
3、鎌倉・室町時代
今様
和讃と雅楽の両者の流れにふれ、「黒田節」など民謡とのつながりも解く。
(教材)
「越天楽今様」
能
(1)能の特色
(2)能の構成と演目
(3)楽器と能舞台
(4)能の作者と流派
(教材)
「羽衣」「隅田川」「安達原(黒塚)」
スライドと、レコードの組み合わせでもよいが、ビデオを用いると予想以上に効果は大きい。
また「羽衣」はストーリーがよく知られており、舞の美しさがじゅうぶん味わえる。「安達原」は、地元の題材だけに、生徒も心を寄せるが、しかしこの能楽の教材の中で劇的な効果で最も感動をよぶのが「隅田川」であろう。
琵琶
(1)平家琵琶の流れ
(2)薩摩(さつま)琵琶と筑前琵琶
(教材)
平家琵琶「祗園精舎(ぎおんしょうじゃ)」、筑前琵琶
「扇の的」
平家琵琶の「祗園精舎」は秘事で、時代的特色がよく理解できる。
また筑前琵琶の「扇の的」は詞章がわかり易く、劇的な盛り上がりが興味をひく。
4、江戸時代
歌舞伎(き)
(1)歌舞伎の流れ、女型の出現に留意する。
(2)歌舞伎の型
(3)下座音楽
(教材)
「勧進帳」「与話情浮名横櫛(よはなさけうきなのよこぐし)」
最も大規模な舞台芸術だけに、できれば本舞台を鑑賞させたいものである。教具はビデオに限る。
「勧進帳」は構成のすぐれた名作で、型を知らせるのにもよい。
「与話情浮名横櫛」は俗に「切られ与三」といわれている世話物で下座音楽の説明にも適切な教材である。
歌舞伎は江戸時代の末期から地方にも広まり、県内でもかつては各地で青年たちによって演じられた。現在でも桧枝岐村や郡山市中田町でも行われており、会津田島町では祗園祭りに関東・関西から招いて行っている。
人形浄瑠璃
(1)人形浄瑠璃の流れ
(2)人形の構造と特色
(3)地方の人形芝居
(教材)
「菅原伝授手習鑑(かがみ)」寺小屋の段。
「艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)」酒屋の段。
これもビデオを用いる。「菅原伝授手習鑑」は時代物で、屈指の名作。「艶容女舞衣」は世話物でお園のくどきの場面では人形繰りの各種の型がみられる。
人形芝居も江戸時代に大流行し県内にも三人遣(づか)いの頭(かしら)は、須賀川市の関下人形、郡山市田村町の行合人形と日和田町の高倉人形がある。ことに高倉人形は、三人遣い以前の古浄瑠璃の頭を思わせるものもあり注目にあたいする。
西会津町屋敷には、秋田の猿倉