教育福島0053号(1980年(S55)08月)-032page

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随想

 

ボランティアを

 

鈴木ハナ

 

鈴木ハナ

 

福島県婦人教育指導員設置要項の趣旨に「婦人教育の重要性にかんがみ、各教育事務所に婦人教育指導員を置き市町村における婦人教育に関する指導助言を行い、もって本県婦人教育の振興充実をはかる」とあり、任務として「教育事務所長の指示により教育事務所社会教育担当者と緊密な連絡をはかり市町村教育委員会、公民館、社会教育関係団体に対して、つぎにかかげる事項について積極的に指導助言にあたる。

一 婦人団体の運営および活動に関すること。

二 婦人の学習活動に関すること。

三 その他婦人教育の振興に関すること。」と挙げられている。

勤務は非常勤であり、その内容は、

一 教育事務所社会教育主事との連絡提携のため、月一回以上出頭すること。

二 社会教育関係団体に対し、指導助言にあたること。

三 婦人学級・講座に対し、指導にあたること。

このように定められた中で県下で十六名の婦人が心を一つにして、研修を重ね、活動を展開している。その末席の私がこのようなことを申し上げるのはおこがましいが諸先生がたの理解と温かいご指導をお願いし婦人の教養と地位の向上に役だちたいと念願している。

さて、去る五月十二日から二泊三日の日程で婦人ボランティア活動研究会が、埼玉県の国立婦人教育会館で開催される呼びかけがあったので、私も参加させていただいたが大変に有意義であった。その中で明治学院大学教授福田垂穂氏の「ボランティア活動の現状と課題」の講演は、国際的で格調の高いものであった。氏は、ボランティアの定義について述べた後、「アメリカの青年たちがボランティアをする理由は、青年自身が自分にとって大事なことだからといって日常のくらしの中でボランティアをしているが、日本のボランティアをする青年は自分を高めるためにとか、社会のためにとか定義づけるので、場所とか時間とか機能などを問題にしたくなってくる。

これはアメリカのボランティアの青年たちの親の八割がボランティアをしており、つまり青年たちが胎内にいる時からその精神が培われているからだろう。日本の青年は自分の親をボランティアのモデルにして活動している人はごく少ない。現代の日本の親、特に母親は育てられてきた慣習がそうさせているのではないだろうか」といわれたが心に残るものがあった。また全体会の席で、「私の子の幼稚園で父母の会が開かれたとき、近隣にある遊園地の清掃活動の話がまとまったので、具体的計画をたて実践にふみきったが、いざ当日になってみると二百五十名ほどもいる会員のなかで出席したのは父親二名母親三名だけだった」という話もだされ、研究生一同、身につまされるやら情けないやらで、口あんぐり、しばし言葉も出なかった。

私の子育てのころは、軍国主義から解放されたのはよかったのだが、誤った民主主義などばかりが一方的にまかり通った時代で、親は自信をなくし、権威は失墜し、家庭教育は外部からぐらぐらとゆさぶられ、PTAなどでも親のあり方がしばしば論議されたことを覚えている。「自分の子に用事を頼むと、子は、必らずてのひらを出して報酬を求めるので、いろいろ悩み考えた末、きっぱりと労働運動から身をひいた」といった母親の尊い告白なども記憶に残っている。労働運動はとにかくとして、あのころの子育ての結果が現在の社会の中でボランティア活動が思うように進展しなかったり、私たちの民族がボランティア活動のことについて、国際的にも批判をうけたりすることと関係があるのではないかと自責の念にかられている。

しかし今からでも、おそくはない。

みんなで手をつないで温かみのある社会づくりに、一人で一歩ずつでよいから、みんなで前進できるようになってみたい。そして、ようやくともりだしたボランティアのあかりを絶やさずに、明るさを増していけるような社会になってほしいと切に願っている。

(福島県婦人教育指導員)

 

 

 


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