教育福島0053号(1980年(S55)08月)-035page
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テストや検査の結果を「できた・できない」「成績が良かった・悪かった」とか「偏差値はいくらだった」という評価評定だけに偏りがちであるが、指導計画の改善や指導法の改善そして生徒の学習法の改善に役だつようにしたいものである。
学習の指導に当たっては生徒自身の興味関心のおもむくままに学習させるのではなく、その教科やその分野の調和のとれた学習の指導を図ることも考えなければならないであろう。
社会科では地理、歴史、公民各分野相互の関連を図ることが大切であると言われるが、生徒側は地理、歴史、公民とまるで三つの教科のように考えているところがあり、分野間の調和をはかる指導も進める必要がある。こうした点を改善するためにカードによる指導を試みた。
社会科学習連絡カード
(「 」は教師から、◎は生徒の反応である。以下事例を紹介する。)
(九月一日)「社会科の勉強をよくやっていますが、歴史の学習に比べると地理の学習時間が少ないようです。地理の学習時間を多くし、不得意な分野を征服するよう努力して下さい。」
◎二学期の学習目標として、地理の教科書をよく読み、国名、都市名などを忘れないよう注意し、重要なことはノートに記入し復習や予習を忘れないようにしたい。
(九月十日)「気候や国名などを、声を出して言ってからノートに書くなどして、自分が使い馴れ自分の身につくようにして下さい。そしてなぜこのような産業が起ったか−どうして食糧を輸入しなければならないのか、−気候はどんなか、などと関係づけて考えてみることがよいでしょう。」
◎気候名や国名などにとまどってしまう。また、なぜそうなったのか、などということに関しては、とくに努力しなかったのでこれからは注意して勉強したい。
(九月十五日)「地理の時間に黙っていて発言しないのではなく、自分の考えや意見を述べること、人の意見を聞くことなどが思考や判断の養成に役立ちます。また、発言するときには声の大きさ、間のとり方などに注意しながら勇気をもって発言して下さい。」
◎発言しようとしても、自信がなくてできなかった、これからはかん違いや早とちりをしても良いから勇気を持って発言するようにしたい。
社会科が好きだ、歴史が好きだと答える理由の第一はテストの成績が良かったからだと答えている。そこには、成績が良かった→おもしろい→好きだ→勉強するというタイプと、おぼえられない→嫌いだ→おもしろくない→勉強しないというタイプが見られる。嫌いな生徒にまず勉強に取り組ませることによって抵抗感をなくし、意欲を持たせたいものである。
また、今まで劣っていた知識、理解の能力を意識的にその問題に取り組ませることによって、知識、理解力が向上し、他の資料活用能力や思考判断能力も向上し社会科の学力が全般的に向上するようになってきた。
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楽しい授業風景
三 おわりに
社会学習連絡カードは、それぞれの生徒の学習上の問題点の解決や指導をねらいとしたものであったが、実際にはそれ以外の問題も提起された。
・自分の学習上の欠点に気づいた。
・内気で質問や意見の発表ができない生徒の意見を教師が理解できた。
・努力して学習しようとしている生徒への激励ができた。
・学習法の工夫の助言ができた。
・授業に対する生徒の意見を取り入れることができた。
・学習についての反省を書くことによって、より深い思慮を促すことができた。
・学習について生徒が目標を持って望むようになった。
・生徒の個性や能力に応じた指導がはかられるきっかけができた。
などがあげられる。
指導の結果として、いままでに嫌いだとされてきた地理の学習に努力するようになり、能力のバランスもとれるようになってきた。能力が低いといわれていた生徒にも学習に対する抵抗感がうすれ、社会科が嫌いだと答えていた女子生徒も意欲をもって努力し成績の向上がみられるようになった。授業中の発表者の指名なども生徒の努力を考えながら発問につとめ、能力の育成を図るようにしている。
私の勤務する学校は三学級とも生徒数二十名程度の小規模学級である。
したがって、大規模校、四十人学級の組織的、計画的な指導とは内容が異なるものであり、小規模校少人数学級は個別指導をしても、テストの採点をしても時間がかからないし、しかも人間的接触が濃い。その特性を生かした独自の指導法の進め方を一層工夫していきたいと思う。
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