教育福島0060号(1981年(S56)04月)-030page
わたしの研究実践
「道徳」指導法の工夫
郡山市立橘小学校教諭
古 川 将 男
道徳の授業をするときにいつも感じることは、し終わってから児童が「こういう場合はこうすることが大切なのだ」ということが心からわかり、やってみようという気持ちがわき出るようにしたいということである。
そんな授業を進めるには、児童のありのままの心にはたらきかけ、どのような感じ方や判断のしかたが望ましいかに気づかせていくことが大切であると考える。
一 研究主題の受けとめ方
主題用語の「望ましい感じ方や判断力」とは、よい行いをしょうとする場合、場面の状況をどう感じとり、どう判断することが適切であるかに気づかせることである。
例えば、道に迷って困っている人を助けようとする場合・かわいそうだからする・ほめられるからするなどいろいろな受けとめ方がある。このちがいは心にどう感じたかのちがいである。
その感じ方のちがいに目を向け、指導を進めていくことは、望ましい行動のあり方を追求し、適切な判断をする場合に大切な条件となるだろう。
「感じ方」と「判断力」は表裏一体をなす心のはたらきである。判断するときには感じ方を伴うが、心の受けとめ方の最も基礎となるもりが感じ方であると・とらえる。
二 主題設定の理由
(一) 児童の受けとめ方の問題点
問題場面に対する望ましい受けとめ方ができていない場合が多い。
・他律的に受けとめるもの
(そうすることがよいといわれているから)
・認識のあまさによるもの
(これくらいはいいだろうと思うから)
・自己弁解的な考えによるもの
(わざとやったのではないから)
他に大人の考えに左右されるもの、感情的立場にたつものなどがある。
(二) 指導上の問題点
授業の進め方にも問題がみられる。
・道徳的判断の指導に力点がかかり感じ方を育てるまでにいたらず、適切で主体的な判断力も弱い。
・望ましい感じ方や判断力が伸ばされず、ねらいの価値の追求も深まらない。
授業の中で問題場面を取り上げるとき、問題を問題として感じとり、望ましい判断力を伸ばすことが課題となる。そのためには児童の受けとめ方に目を向けた指導が大切であると思い、主題を設定した。
三 実態調査と考察(略)
〈教研式新道徳性検査実施〉
四 問題の集約
(一) 問題の所在
中学年児童は場面に応じた適切なとらえ方がよくできない。反応のつまずきも多い。原因として次のことが考えられる。日常の行動が大人の言いつけに従ったり、生活のきまりを忠実に果たそうとしたりし、他律的な行動が多く主体的な判断ができていない。また問題場面の受けとめ方も自己中心のものが多く、相手の立場を考えたり望ましい生き方を追求したりすることがむずかしい。
(二) 解決の見通し
児童の道徳性の実態をより望ましく伸ばすために、指導を進める場合次のように考えることができる。
1) 実態調査をし指導に生かす
事前に、問題場面をどのように受けとめるか実態をとらえ、問題の傾向を分析し、授業でどう取り上げていくかを検討する資料とする。
2) 指導方法を工夫する
ア 指導過程に望ましい受けとめ方を伸ばす場を位置づける。
イ 場面に応じた受けとめ方をださせ望ましいものに気づかせる。
ウ 感じ方を伸ばし、主体的な判断力を育てる。
道徳の指導において、事前調査を行い、場面に応じた受けとめ方の傾向をとらえ、指導過程の中で望ましい受けとめ方を伸ばしていけば、判断力も高まり実践意欲を向上させることができるだろう。