教育福島0062号(1981年(S56)07月)-031page
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のと言っても過言ではなく、その基礎実習を四時間(他のテーマとともに六班のローテーション)で実施している。内容は、
1)スレシホールドレベルの測定
2)ファンアウトの確認
3)各種ゲート回路の動作確認
4)RSフリップフロップの動作
5)JKフリップフロップの動作
6)Dフリップフロップの動作
7)簡単なデジタル回路の設計法
などである。
これらの項目ごとに、ICに直接ふれながら実習できるように、一個のICを小さなアルミケースに組み込み、ICの各ピンをその数だけ設けたケース上の端子に結線したもの(ICボックス)を準備した。したがって、生徒はケース上に描いてある論理記号を見ながら実習をすすめることができる。尚、ここではデジタル発振器や出力表示器なども準備した。
(二) 各種デジタル回路の実習
基本的なデジタル回路は、各種のゲート回路とフリップフロップ回路の組み合わせによって構成されるが、実習ではその中からいくつかを選んで指導している。指導時間は(一)と同じで、内容は次のとおりである。
1)デコーダー回路の組み立てと動作
2)カウンタ及び分周回路の組み立てと動作
3)直列シフトレジスタの構成と動作
4)四ビット直列加算・減算回路の構成と動作
1)と2)は先のICボックスを用い、3)と4)は大きなシャーシーに十進入力設定部・ニンコーダー・Aレジスタ・Bレジスタ・加算回路・補数回路・遅延回路・出力表示部を配置した。各部の信号は、すべて発光ダイオードで表示できるようにした。
既製のデジタルトレーナでは配線に多くの時間を要し、接触不良などのトラブルがあったが、改良を加え今回はセット化してあるため多くの項目について実習を進めることができたししかも、一人一人が動作確認をする余裕もできたので効果的であった。
(三) マイコンによる制御の実習
これまでコンピュータを利用した実習内容は、フォートランのプログラミングぐらいであったが、工業高校としては制御や計測に利用する分野も指導すべきだと考え、以前より製作実習に取り入れるなど方法を講じてきた。
コンピュータによる制御にはアセンブリ言語、もしくはそれに近い特殊言語が用いられる場合が多かった。
そこで、マイコンの頭脳部としてのMPU(マイクロ・プロセッサ・ユニット)に最も多く汎用されている80系を採用して、アセンブリ言語の二ーモニックコードでプログラミングし、これを手作業で機械語に変換してキー入力する方法(ハンドアセンブル)を指導してきた。
アセンブリ言語を指導するためにはフォートランなどのコンパイラ言語と違い、MPUのアーキテクチャー上の特徴を指導する必要がある。そのために電子工学3)(下巻)−内容は情報技術−の教科の時間にこれらを指導してから、昨年はランプとモーターの組み合わせという簡単な制御モデルを製作して、教卓実習の形で実施してみた。簡単な装置であったが、メカニカルなものをマイコンで制御することに対する生徒の興味と関心には、データー処理に対するそれとは異なるものがあると感じさせられた。やはり工業高校としての本来の領分をそこで見出すのかも知れない。
マイコンはNECのTKI80に汎用インターフェースである8255を一個増設し、入出力ポートを五個とし最大四十ビットの入出力信号を発光ダイオードでモニターできるようにしたものを準備した。MPUが外部機器との間で信号の受け渡しを行う際に必要なインターフェース回路としてはリレーを用いて製作した。
ここでの指導項目は次のとおりである。
1)MPUのアーキテクチャー上の特徴とマイコンの命令
2)簡単な入出力インターフェースの例
3)ハンドアセンブルによる制御の実習
今年は制御モデルとして、ステッピングモーターを用いたXIYブロックを製作し、実習のローテーションに組り入れて指導する準備を進めている。
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マイコンによる制御実習の教材
四 おわりに
工業高校に入学する生徒の能力・適性などの多様化は今に始まったことではない。工業教科の消化不良を起してしまう生徒に対して、どのような教材を準備して如何に指導するかは今後とも重要な課題である。
情報技術の指導でも、生徒が興味と関心を持つ教材を準備しながら反復指導することにより、基本事項の徹底理解を図るとともに、時代に即応したものを取り入れていくことによって、少しでも魅力的な学科にして行きたいと考えている。
この点からも、PCなどを積極的に導入することには大きな意義があるのではなかろうか。
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