教育福島0065号(1981年(S56)10月)-029page
随想
夏休みに拾う
矢吹恵三
夏休みになるのを、待ちかねていたように始まった子供会の早朝ラジオ体操と、球技の練習の世話に、今年もまた学校に出かけてみた。
四コートに分けられた校庭では、すでにいくつかのチームのソフトボールや、ドッジボールの練習が開始され、気合いの入ったPTA地区補導委員のかたがたのコーチが続いている。
各地区においては、それぞれの計画を持って補導委員が中心になり、早朝練習に励んでいるのである。
午前六時十五分ごろになると、おとしよりやお父さん、お母さんに手を引かれて集まってくる幼児や小学生が、東側には中通り、西側には荒町と、それぞれラジオをとりつけ、朝のさわやかな校庭いっぱいに、ラジオ体操の歌声とともに体操が始められた。
子供たちは、休みともなるとリラックスした気分で参加し、服装もはき物も千差万別、色とりどりで本当に自由そのものである。ラジオ体操も動作がわからないのか体操になっていない。
これでよいのかとひとりごと…全員集めて説教、いや、ここは早朝の気分さわやかな時だから、「先生から話があるから集合!」と言ってみる。「みんな、朝早く集まって体操をしている姿はとてもすばらしい」「六年生が、下級生の世話をよくしている姿に感心感心」「体操は、軽くて動きやすい服装ですると、正しい運動ができるぞ」「体操は全身を伸び伸びと、曲げるところは十分曲げるよう」「校庭をみてごらん。気のついたことは…休みに入った時はゴミは一つなかったね。みんなの力でさあひとがんばりだ」
子供たちはクモの子を散らしたように校庭いっぱいに広がって、ゴミを拾いはじめた。ものの五分もかからないで、あの広い校庭のゴミを一つ残らず拾ってくれた。偉大な力に感激−大声で「みんなありがとう」子供たちは手を振りながら“さようなら”をした。
現代の子供は、働かないとか、仕事がへただとか、根気がないなどといわれているが、そうではないと思う。
大切なことは、子供の発達段階を知り、個人や集団の実態をさぐり、何をどのような順序ですればよいのかをわからせ、責任を持って実践できる場と機会を作ってやることだろう。
また、集団生活のマナーや、公共物使用の態度も指導されなければならないだろう。
そのためには、私たちが子供たちの活動に積極的に参加し、子供の側に立ってその内面の理解を深めながら、よりよい人間形成が図られるよう、一人一人の個性・能力に合った援助、指導をすべきではないだろうか。
二、三日過ぎた早朝ラジオ体操の子供たちは、体育着やズック靴になり、しかも、六年生が正面にならび、整った隊形できびきびした体操ができるようになった。ラジオ体操から流れる音も、一段と校庭いっぱいに響き、活気のある気持ちのいい光景が見られる。
(小野町立小野新町小学校教諭)
早朝ラジオ体操風景