教育福島0067号(1981年(S56)12月)-022page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

ことになった。

調査地は、福島市、会津高田町、昭和村、相馬市、いわき市の五地区で、次の区分により録音採集を行い、文字化して共通語訳と注釈をつけるものである。

 

1、老年層の話者による会話

 

2、老年層と若年層との会話

 

3、目上の者と目下の者との会話

 

4、場面設定による会話

 

5、民 話

(今年度は老年層による会話を収録)

 

録音風景(会津高田町)

録音風景(会津高田町)

 

十一 埋蔵文化財保護の現況

 

文化財保護法でいう「文化財」には各種の対象物があるが、埋蔵文化財についてはその取り扱い方が他と異なっている。即ち、文化財の多くは、歴史上、芸術上、学術上価値の高いものが文化財と指定され、文化財保護法によって保護されている、ところが、埋蔵文化財に関しては、遺物はすべて「考古資料」として文化財の取り扱いを受けるほか遺跡は我が国にとって歴史上又は学術上価値あるものとして埋蔵されている状態で保護すべきものとして取り扱いを受ける、したがって遺跡地内で工事等を行う場合は、すべて所定の書式による届けを文化庁長官に提出しなければならず、長官はそれに対し必要あれば、禁止、停止、中止命令を出すことができるとされている。(法第五十七条)したがって遺跡は、文化財としての指定があるとないとにかかわらず、法の規制を受けているわけである。

現在県内では一般に周知されている遺跡数は、六千か所をこえている。しかし、まだまだ我々の知らない遺跡も多い。福島県文化センター遺跡調査課で調査した阿武隈中部第一地区の農業開発事業地内の分布調査の例をあげると、周知の遺跡数が五十八か所であるのに対して、今回新たに発見されたのは七十七か所である。倍を越える新発見遺跡があったのである。これから考えても県内の遺跡実数は一万か所をはるかに越えるものと考えられる。 「国及び地方公共団体は、周知の埋蔵文化財包蔵地について、資料の整備その他その周知の徹底を図るために必要な措置の実施に努めなければならない。」(第五十七条の四)とされており遺跡の周知については今後更に積極的に対応することが必要である。

ところで、埋蔵文化財の保護は文字通り遺跡を現状のまま保護保存し、愛護活用することが大切である。古くから今日まで残されてきた遺跡を、むやみに発掘することはできるだけ避けるべきである。埋蔵文化財はかけがえのない国民共有の文化遺産だからである。この考えに従って、大規模開発では起業者側と協議の上できるだけ遺跡をそのまま残すよう努力している。前述の阿武隈中部第一地区農業開発事業地内は、常葉町、都路村、川内村内で七百七十八・六ヘクタールの開発を行うものであるが、昭和五十四年に表面調査を行い、周知の遺跡と新発見の遺跡を併せ百三十五か所の遺跡を確認した。これにもとづき、同年と翌五十五年には試掘調査を行い、年度ごとに次の三通りの方法で保存協議を行っている。1)現状のまま保存する遺跡2)工事中立会いをする遺跡3)盛土工法により保存する遺跡、これでほとんどの遺跡は対応できる。牧草地とか採草地とか呼ばれる畑をつくる事業なので、現状をあまり動かさず事業が可能なためである。このような例はむしろまれで、止むを得ず発掘調査を行う必要に迫られる場合も少なくない。

行政機関は遺跡の保護・保存を積極的に行う義務がある 発掘調査は開発等でやむなく破壊される場合にこれを行うが、あらゆるデーターを残すために実施するという点では、第二義的なものである。行政機関で行う発掘調査の多くは、「記録保存のための発掘調査」と呼ばれる理由もここにある。現実には、県内でも開発に伴なう行政機関の発掘が全体の九十パーセントを越す状態であり、この対応に追われている。

特に、調査期間・調査費用・専門職の確保等で苦労することが多い。いわ

 

弾正作横穴群(いわき市)

弾正作横穴群(いわき市)

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。