教育福島0067号(1981年(S56)12月)-023page

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き市では、(財)いわき市教育文化事業団を昭和五十三年に設立し、調査係を設けて遺跡の発掘を実施している。県でも(財)福島県文化センター内に遺跡調査課を設け、本年度も三名の定員増を加えた二十三名の専門職員が、増大する開発に対応しているが、それでも十分な体制でないのでこの抜本的解決のため「県立埋蔵文化財センター」の設立について現在検討を進めている。

大規模開発は大規模発掘調査に連がる。県教委で対応した東北新幹線関連遺跡発掘調査では、分布調査から発掘調査・整理報告書刊行まで、十一年の年月と約四億円の経費を要している。県内での埋蔵文化財調査は、昨年度百六十四件で、緊急発掘調査費は約一億九千六百万円に達している。その結果貴重な遺構や遺物が次々に発見され、ふるさとの歴史に厚みを加えている。しかしこれにも問題は残されている。個々の市町村では調査体制を十分に組むことができず、経費負担も決して楽ではない。

また、ぼう大な考古資料が何の価値づけもされず、倉庫等に死蔵される場合も多い。一片の土器に歴史の息吹きを与え、先人の発展の跡を大切にする意識がなければ、明日の発展はないものである。そういう意味では、本県各市町村で「歴史民俗資料館」が、毎年一、二館ずつ新設されることは、喜ばしいことといえる。更に今後は学芸員その他の人的体制の充実に努めることが必要である。

毎年累積する資料の史料化を早急に行わねば、貴重な資料も史料価値を減じてしまう。開発に伴なう発掘調査も、調査後の資料整理にもっと力を入れ、「記録保存」のための調査であれば、報告書も概報程度で可とすべきではなく、正式な調査書刊行に努めるべきである。

県内の調査でも、単年度一遺跡で四千万円以上の調査費となった油王田館遺跡(安達町)の例や数年次にわたり一遺跡の発掘と整理に取り組んでいる愛谷遺跡(いわき市)では約三億円の経費を投入している例があり、これら真正面から取り組んでいる市町村にならい、文化財保護行政の推進に今後とも積極的対応が望まれる所である。

 

(一) 主要発掘調査

 

1 関和久遺跡(泉崎村・県教委調査)

 

古代律令官制の地方官制として、国・郡・(郷)・里があるが、その中で白河郡の郡衙に推定されている関和久遺跡の調査は、今年度を最終年度とし十年目を迎える。考古学者や古代史学者から熱い目を注がれている関和久遺跡は、我が国でも郡衙としての遺構が今日まで最もよく残っている遺跡と考えられ、その四至や院・倉のあり方についての実体の一端が明らかになりつつあり、今後は史跡としての指定とその整備に取り組む必要がある。また、「白河軍団跡」ではないかと、ひそかに識者間で言われている「上町遺跡」の解明に取り組む事を検討中である。阿武隈川の北岸にある「白河軍団」 「白河郡衙」、南岸に位置する「借宿廃寺跡」が郡衛付属寺院とするならば、古代における律令制の体制はセットとして一挙に明らかとなり、東国の日本史に一つのページを書き加えることは必至となろう。

都道府県別埋蔵文化財担当専門職員数(昭和55年5月1日現在)

 

昭和54年度都道府県別発掘調査費用

昭和54年度都道府県別発掘調査費用

 

( )内は発掘調査にかかわる国鷹補助事業費を示す外数

( )内は発掘調査にかかわる国鷹補助事業費を示す外数

 

関和久遺跡

関和久遺跡

 

 

 


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