教育福島0067号(1981年(S56)12月)-025page

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周濠は全掘し、墳丘は石室を中心として約半分近くを発掘した。その結果従来の調査結果に多くの新知見を加えることができた。内部主体は、他の石室と同様に胴張りの横穴式石室で、河原石と泥岩を用いてある。床面には拳大の河原石を敷きつめてあった。床面には被葬者の歯骨と骨片があり、玉類・直刀片などが検出された。興味を引くのは、石室の一番手前で周濠に接する部分に須恵器や土師器が安置され、周辺から耳環・腕環・勾玉・寵玉・管玉など各種の玉類が検出されたことである。更に、この部分のみは周濠が浅くブリッジ状となっており、先述の早稲田古墳群の十号・十四号墳と類似の状況を示している。

 

沼の沢3号墳全景

沼の沢3号墳全景

 

●二塚遺跡(長沼町)

 

ここ数年来続いて調査されている、県営圃場整備事業に伴なう発掘調査の一つで、円墳跡三・土坑四十六・古墳時代竪穴住居跡一・掘立柱建物四その他が検出された。

円墳のうちA地区の一基はわずかに墳丘が残っているが、B地区の二基は墳丘はすでにない。三基とも周濠が残存しており円墳であることと規模が確認できる。したがって、内部構造はすでに破壊されて残存してないのは心残りである。

 

●原山一号墳(泉崎村)

 

すもうとりの埴輪として愛称されている埴輪が出土した古墳である。県教委文化課文化施設整備室によって調査が実施された。

過去の大盗掘孔があるが、円筒埴輪片が多く検出されており今回、形象埴輪の発見が多数あった。

 

以上八か所の古墳調査について述べたが、県内の古墳の形態はすべてが今年度調査されたことになる。

すなわち、前方後円墳・前方後方墳・円墳・方墳であり、このようなバラエティに富んだ古墳の調査は、単年度としては戦前戦後を通じてはじめてであり、今後とも二度とないのではないかと思われる。

したがって、発掘調査後の資料整理や、報告書刊行に期待が寄せられている。

他に横穴群として、昨年度貴重な副葬品を多数出土した郭内横穴群(白河市)の第二次調査が本年度も実施される。

 

原山1号墳

原山1号墳

 

(二) 発掘技術者講習会

 

今年で九回目を迎えたこの講習会は、県教育委員会及び飯舘村教育委員会の共催により、八月三日から十三日(実質九日間)、にかけて飯舘村老人憩の家・生活改善センター・双葉町公民館を会場にして実施された。

講習会は、講義(埋蔵文化財保護の現状・発掘調査計画・県下の遺跡等と実習(分布、試掘調査・発掘調査の実際・土器の復元、実測等)を内容としたものであったが、会場が、阿武隈山地の飯舘村であったためか、参加しにくい面があったようではあるが、村教委の多くの協力のもとに、合宿を重ねての講習会は、参加者に充実感を与えた。

また、最終日の外部講師による講義は、宮城県教育委員会文化財保護課長氏家和典氏の「東北の大型古墳」であったが、会場を双葉町公民館に移し、地元に公開したため約五十人の参加があり、有意義であった。

来年度は、多くの参加者が得られるよう開催地を選定するとともに、九日の日程を七日に短縮し実施する計画である。

 

受講風景

受講風景

 

 

 


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