教育福島0067号(1981年(S56)12月)-033page

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第29回 福島県図書館大会

県立図書館館外奉仕課長 赤座信道

図書館コーナー

 

図書館コーナー

 

第二十九回福島県図書館大会は、去る十月十三、十四日の両日、新築成った郡山市図書館において、“図書館の社会的認識を高めよう”との趣題のもとに関係者百六十名が参加して開催された。その概要をここに紹介する。

一 参加者

県内各地からの参加者は年々多くなり、図書館協議会委員も各館から参加し、また公民館の参加も多くなってきている。従来は開催地が大半であったのが、ここ数年未開催地と県内各地からの参加者が相半ばするようになってきていることは、図書館活動に対する町村の関心の高さを示していると言えよう。

二 講演

長らく国会図書館に勤務され、農村開発企画委員会常務理事の石見尚氏は、その経験と、全国の町村を具さに視察調査されている立場から、「図書館の時代」と題して、「町村の図書館づくりは、現段階では『郷土館』の要求が先であり、八十年後半から本格的になるであろうが、その前ぶれとしての公民館図書室は、専任の職員を配置して図書館活動を行うべきである。首長は産業の発展を図るにしても、その原動力となる人づくりを考えている。それには情報を沢山集め、知識を共有することであり、そのためにはよい図書館を待たなければならない」と、今後の町村の図書館づくりの方向を示してくださった。また「活字ばなれとマンガ」については、「最近は文芸作品を読むことも少なくなってきており、読むことの代わりとして、週刊誌やTVを見る時代と変わって来ている。TVが放映したものが読まれるというTV先行型の文化となって、幼いときからTVの影響が大人になってもマンガを見るのではないか。また、マンガの是非を論ずる前に、マンガには子供たちの想像をかきたてる空想の世界があり、子供の心にくいこむモラルがありはしないか、そして今の子供たちのモラルに対応できる本がもっと多く出版される必要がある。そしてこれからの時代は、物を考えるという行為には、もちろん読書が大切であるけれども、更に想像と現実との間をとりもつ視聴覚資料をぬきにすることはできない。したがって、図書館は視聴覚資料の収集提供が大きな課題となってくる」と図書館関係者に大きな示唆を与えてくれた。

三 パネルディスカッション

従来の事例発表の形で図書館、公民館、文庫等から行っていたが、今年は行財政側から会津若松市総務部次長大内明氏、図書館側から郡山市図書館副館長佐藤晃二氏、利用者側から郡山市すぎの子読書会阿部郁子氏、マスコミ側からNHK福島放送局長高橋雄亮氏がそれぞれの立場から図書館のあるべき姿について意見がのべられた。平素日常業務に追われている図書館職員にとっては、今後の図書館の歩むべき方向を認識させてもらったようで、関係者は大いに自信を得たようであった。時間の制限もあり、十分な討論はできなかったが、今後続けていきたい感を深くした。

四 特別報告

宮城県図書館司書平形建一氏の「北海道置戸町の図書館活動」はスライドによって過疎の町に生き生きと根づく図書館活動が紹介された。人口六千人のオホーツク海に近い山村が、人口一人当り、蔵書冊数四・八冊、貸出冊数七・五冊、図書購入費五四二円、登録率二十六。パーセントのどれをとっても日本の上位にランクされる図書館活動を眼の当たり見ることができ、北海道と内地と事情の相違はあるにしても、”図書館がはんとうに住民のもの”ということをはだで感じとっていただけたことは、大きな収穫であった。

盛り沢山のプログラムで、分科会においては十分な討議をする時間がなかったことが残念であったが、参加者一人一人が、自分たちの図書館をどう高めていくかの認識を新たにして散会したことを信じ、大会の報告とする。

席上、表彰されたのは、次のかたがたである。

 

鈴木 孝子 郡山市図書館

五十嵐雪子 喜多方市立図書館

佐藤 真一 福島県立図書館

菅野 俊之   〃

吉田  剛   〃

佐藤善右衛閂 保原町中央公民館

大橋 玲子   〃

星  薫市 田島町中央公民館

 

 

 


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