教育福島0072号(1982年(S57)07月)-036page

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いわき子どもの本を考える会

 

代表

 

佐久間クラ子

 

図書館コーナー

 

図書館コーナー

 

昨年二月、いわき市立中央図書館で「児童の読書を考える集い」が開かれました。講師は県立図書館司書の、浦井洋子さんです。

いつも図書館に通って本を借りてはいても、その利用者が集まって共通の話題について考える機会が、今までにありませんでした。この日、浦井さんのお話の内容が身近な問題で、参加者同志が共鳴する点が多く、初顔合わせですのに何となく親しみのもてる雰囲気になりました。

お話が終わって質問の時に、今後も図書館がこういう会を継続して開いて欲しいと要望が出されました。それに対して浦井さんから「開いて欲しいという受身の形でなく、自分たちの手で、自主的に活動しなければ発展がないし長続きしない」と助言がありました。それを受けて、その場ですぐに呼びかけがあり、希望者がそれに応えて会の発足のきっかけが作られたのです。早速、翌月から集まりが持たれ、会が誕生しました。それが「いわき子どもの本を考える会」なのです。

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それから手さぐりで歩いて来たこの一年です〇四月末に第二回総会が開かれました。行事報告から一年間をふり返ってみますと、月一回の例会は、会員がレポーターとして発表したり話し合ったのが六回、テレビを利用したのが一回、講師の話を聞いて勉強したのが五回です。テーマは各月ごとに関連があったりなかったり、行き当たりばったりの感じで反省させられます。

会員は約四十名ですが、出席は大てい二十名位です。「わが子にどんな本を与えたらよいか、どうすれば本の好きな子になるか」と、真剣に考える母親たちがいます。幼稚園、保育所や小学校など教育の場での子どもの読書を考える先生たちもいます。「地域の子どもたちにょい本の出会いを」と、奉仕する家庭文庫や地域文庫の人たちもいれば、「子どもの絵本や童話が大好きで自分の楽しみのために」と、いう人など、いろいろな立場の会員から成り立っています。ともに子どもの本に関心を持つ人々なのですが、目の向いている方向が少しずつ異なります。又「子どもの本」と言っても、おびただしい数の、さまざまな分野にわたっての本があります。会の方向づけに悩むのは、この点でした。そして今後もその問題とともに歩むわけです。

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さて二年目に入りました。去年より少しは成長できるのではないかと思います。

「考えるだけでは何にもならない」と云われたことがあります。本当にそうでしょうか。考えることから物事は始まります。子どもの本を考えるためには、子どもの本を知らなければなりません。子どもの本を知るためには、子どもの本を読まなければなりまぜん。読んで考えていると、きっと見えてくれるはずです。「どれが良い本か」ということが。そして良い本からはどんなにすばらしいものがもたらされるかということが。

目が開かれ、会に自信と深さが増してくれば、自然に行動を起こす力が出てくるでしょう。その動きも、会員の立場の違いや考え方の違いによって方向が分れるのは当然と思います。

今年度の行事計画の参考にアンケートをとりました。「いわきの民話を研究したい」「読みきかせ、ストリーチリングを勉強したい」 「童話の創作をしたい」 「絵本の手作りにとりくみたい」など、すでにいろいろの方向へ行動を起こしたいという気配がうかがえます。それが十分に熟した時、会全体として取り組むか、分科サークルとして取り組むか、よく考えて実践に移りたいと思います。

まだ生まれたばかりの会なのですから、急いで息切れのしないよう、ゆっくり歩いていくつもりです。

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今年度から毎月、会報を発行し、欠席の方にも例会の様子を知らせたり、紙上で意見の交換をはかることになりました。当然、六人の世話人の仕事がふえます。「大丈夫かな」と思っていましたら何人もの会員の方が「印刷や発送などいつでも手伝います」と云ってくれました。この会の自慢できるところは、このようにみんながあたたかい心で支え合っているということです。

 

 

 


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