教育福島0073号(1982年(S57)08月)-006page

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提言

 

東京と「ふるさと」

 

東京外国語大学長 鈴木幸壽

 

筆者紹介

 

昭和十四年旧制白河中学校を卒業後東京外語大(旧制東京外語学校)でドイツ語を学び、東北大法文学部へ。東北大での専攻は、ドイツ社会学であった。母校東京外語大の教壇に立ち、講師、助教授を経て四十一年から教授。昨年十二月一日、七年間その任にあった学生部長から学長に就任した。

専門の社会学分野における実績は高く評価されており、特に、地方の権力構造、選挙行動についての多くの論文を発表、その調査と分析は専門家の注目の的であるという。主な著書に「現代社会と政治」「ドイツ社会学講座十八巻」などがある。

日本社会学会、日本政治学会、国際学友会、大学セミナーハウスの各理事のほか、国立大学協会常置委員会委員をはじめ活躍の場は広範囲にわたっている。白河市出身。大正十一年生。

 

大気汚染、騒音、振動、地盤沈下、交通渋滞、住宅・幼稚園・保育所・公園・緑地の慢性的不足、火災・風水害地震対策の遅れなどなど、これだけ列挙すれば、どうしょうもなく膨れるだけ膨れあがった巨大都市東京が、いかに醜悪であるかがわかるというものである。にもかかわらず、人口の一割以上一千二百万人もの人びとが、ひしめき合いながら住んでいる。当然何かメリットがなければこんなところに住んでいるわけがない。一体何処に魅力があるのか。世代によって意見は異なるが、調査によると若者の意見は「活気があって若々しい」(六十六パーセント)しかし「うるおいがない」(八十一パーセント)「人情味がない」(八十八パーセント)と答えている。

たしかに生活上の便宜からいえば、地方とは比較にならないほど東京はよいのだろうが、問題は「うるおいがない」「人情味がない」という点にある。流行歌の題ではないが、『東京沙漠』的状況が、案外若者にとっても東京の住みにくさの原因になっている。そこで鈴木東京都知事は「マイタウソ構想懇談会」を発足させ、「東京ふるさと」作りに積極的に乗り出した。しかし、東京は果たしてわれわれを

 

 

 


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