教育福島0073号(1982年(S57)08月)-013page
4) 合科的な指導では、自由な学習場面が多く、児童の個性を伸ばすという面でも可能性がある。
2 合科的な指導実施上の留意すべき事項
合科的な指導は、その経験が乏しく決定的な方式が研究されているわけではない。低学年における指導法の研究課題として、実践的な研究の推進を積極的に図ることが大切である。次の実施上の一般的な留意事項をふまえて研究的な指導を図ることが必要である。
1) 基礎的・基本的事項を明確にしながら、重点をおさえた指導ができるようにする。
2) 直接体験させる活動が十分できるよう、自然環境や施設・設備の活用を工夫する。
3) 児童の自主的な学習活動が助長されるよう、多様な活動を効果的に取り入れるようにする。
4) 新しいものを発見したり、問題を解決したり、ものを作りあげたり、協力し合うなどの喜びを十分味わわせるようにする。
5) 学習に対する興味や意欲を高めようとして遊びの活動のみに重点がかかり、遊びに流されないようにする
6) 指導計画に弾力性をもたせ、児童の実態や環境条件等に合わせながら展開できるようにする。
三 学習指導の充実
「ゆとりと充実」という言葉が、新しい教育課程の代名詞のようになり学校教育の中に根づいた感がある。一日の生活時程の工夫や創意を生かした教育活動の時間の運営、毎時の授業の改善などによって「ゆとりあるしかも充実した学校生活」の実現へ向けて着実に前進しつつあることも確かである。
しかし、学校の教育活動の中核である授業そのものについて考えたとき、必ずしも児童生徒にとって「ゆとりあるしかも充実した」ものとなっているとは言い難いのではないだろうか。
児童生徒がじっくりと学習に取り組み「わかった」「できた」という喜びや充実感が味わえる授業の創造へ向けて、今こそ全力を注がなければならない。
(一) じっくりと活動ができる授業の展開
児童生徒が、じっくりと学習できるためには、何といってもまず、時間的なゆとりが必要になる。いかに優れた教材を用い、新しい指導法を取り入れてみても、一時間の授業の中で取り扱う学習内容が多ければ、結局、児童生徒は消化不良をおこしてしまら。
単元・題材の内容・時数については教育課程編成の段階で精選・重点化が図られているはずなのに、肝心の一時間一時間の授業になると、かなり窮屈な展開をしてしまうことが多い。
1 指導目標の明確化
単元・題材はもちろん、本時の指導の目標をできる限り中核的なものにおさえることが大切である。あれも教えたい、これも学ばせたいと欲張らず、この単元・題材では、この一時間では何を指導すべきかを洗い出し絞っていくことが大切である。その際、次の点に留意したい
・学習指導要領の目標・内容をふまえる。
・児童生徒の実態をふまえる。
・指導目標が、児童生徒の学習目標に転化し得るものとする。
・到達可能であり、児童生徒自身も到達可能であることがわかるようなものとする。
・一般的・抽象的なものでなく、できるだけ具体的で焦点化されたものにする。
2 学習内容・活動の精選
目標が絞られても、指導すべき内容が多ければ、ゆとりをもった学習の展開は期待できない。
また、授業案の「学習活動」の欄をみると、一時間の活動が七〜八項目にもわたって設定されているものを見かけるごとがあるが、こうした授業では児童生徒はゆとりをもって学習することはできない。
学習内容・活動の精選に当たっては次の点に留意したい。(学習内容について)
・量よりも質の吟味児童生徒がどれだけ多くのことを学んだかということよりも、どれだけ価値ある学習ができたかどうかが問われるのである。
転移可能な基礎的・基本的な内容かどうかの吟味によって、一時間に取扱う内容をできるだけ精選する努力をしていかなければならない。
・能力差に応じる工夫
水泳の授業で、水に顔もつけられない児童に、他の児童と一緒にクロールの指導をする教師はいない。
しかし、これが、国語や算数・数学の授業になると、どの児童生徒にも一様の内容が与えられてしまう。これでは、能力の低い児童生徒は、ますます低いままに放置されよう、個々の児童生徒の能力差に応じられる工夫がほしいものである。
(学習活動について)
・中心となる活動の設定
一時間の中で、中心となる活動をまず一つだけ明確におさえて、時間を十分にとる。その活動は、もちろんその教科の本質と直接的にかかわるものになろう。
例えば、体育の授業では、実際に運動する活動がそれであって、話し合ったり相談したりしている活動を中核に据えることは望ましいもので一はない。
・導入の工夫
学習時間にゆとりがなくなる授業をみていると、導入にかなりの時間をとられている場合が多い。
単元・題材全体の学習課題や学習