教育福島0073号(1982年(S57)08月)-023page
九 へき地・小規模校の教育の充実
(一) へき地の特性を生かす学校・学級経営
へき地の特性は、「へき地性」「小規模性」「複式性」などに要約される。教育上の課題はそれぞれの学校により相違はあるが、ともすると短所を克服する方向でとらえることが多い。子どもの実態や環境条件を見直し、劣性、短所的要素を逆に特性としてとらえ、これを生かすことを考え、へき地校だからできる、小規模校だからできる教育の創造と実践が望まれる。
1 少人数の特性を生かす経営
一人一人を見つめ育てる指導が可能である。複式授業を通して、自学自習の習慣や異学年との協力活動から、より主体的に学習する態度を育てることができる。これらの長所を生かし、基礎的・基本的事項を身につけ、一人一人の能力や個性に十分配慮した指導を展開する。
2 体験的な活動を重視する経営
地域を見つめ理解し、誇りを持つ児童生徒の育成をめざし、地域の伝統・生活・自然環境・素材等を生かした学校行事、創意を生かした教育活動の時間教科指導等、地域に根ざした教育活動や体験的な教育実践を重視する。また一方、新しい生活環境に身を置いたり、新しい事象に触れて行う活動体験は、将来を生き抜く力や態度を育成するうえで重要であり、積極的に計画し、実践する必要がある。
3 地域との連携を図る経営
子どもは豊かな環境の中で、学校の教育力、家庭の教育力、そして地域の教育力で育つ。地域には、教科書や学校内では得られない生きた教材や学習の場がたくさん存在する。「地域講師」の援助を仰ぎ、多様な体験、経験の中で生きぬいてきた先人から児童生徒が直接学ぶことができる機会を設けるなどの工夫が必要である。
4 全教師が機能する経営
個々の教職員が明確な組織の位置づけと、学校教育目標の具現化方策の共通理解を基にして、学級の教師から学校の教師として学校教育活動に一致して当たる経営が望まれる。
(二) ゆとりある充実した学習指導の展開
学習指導の展開に当たっては、教師と児童生徒との触れ合いの緊密さを生かし、一人一人の認識過程をふまえた指導の推進が望まれる。
1 到達目標の明確化
学習が意欲的・主体的に進められるよう指導過程を組織し、目標、課題、教材内容、学習方法等が一人一人の学習成立に機能するよう配慮する。小人数学級で唾 一人一人の学習到達度を明らかにして、継続した指導がしゃすく、記録の累積を図るにも利点があることに留意する必要がある。
2 間接指導の工夫
複式学級にあっては、直接指導と間接指導との有機的な関連を図り、特に間接指導における児童生徒同士の話し合いや教科に応じた学習の進め方などの学習方法の訓練を重視して、主体的な学習がなされるよう留意する。また、間接指導が順調にいくようにとの配慮から、直接指導で学習活動のための手だてを与え過ぎないよう留意する。
3 個に応ずる配慮と助言の工夫
学習能力を初め、いろいろの点において差異の見られる児童生徒たちは、学習の対応の仕方も個々に異なってくるのは当然である。それらの児童生徒が積極的に学習に取りくめるよう、一人一人の考えを大事に取り上げていくとともに、個々の学習の状況をよくとらえながら、適切な示唆や助言の与え方について、十分工夫していくことが大切である。
4 学習形態の工夫
固定的な小集団では、集団内における個人の位置が固定化して安定する。特に少人数学級においてはこの傾向がつよい。授業でも特定な一部の児童生徒との一問一答で進められやすい。複式では時間的に弾力的な方法が取りにくいが結果を急ぎすぎないで学習形態の上でも話し合い活動を取り入れていくよう工夫する。
5 教材、教具、機器等の活用
学習を意欲的に行わせるためには学習の具体的な手がかりともなる教材、教具、機器等の活用について一層の工夫が必要である。特に間接指導の時間は、児童生徒の主体的な学習を促すよい機会であるので、それがより効果的に行われるようにするためにも、それらの活用について十分な工夫が必要である。
6 基礎的な知識・技能の定着をはかる学習過程の重視
結果を急ぐ形式的な指導でなく、理解をしていく学習過程を重視し、関心、態度を高めるよう努力する必要がある。
ある内容について学習していく場合、児童生徒は既習の経験に立ってこれまで身につけてきた知識、技能あるいは考え方を活用していく。その活用の中で一層確かな理解に向うのである。したがって、そのような活動が意欲的に行えるよう学習過程を工夫していくことが大切である。
7 教材の精選と指導
教材の精選と指導の重点化に配慮し、時間的なゆとりの中で、個別指導が行われるようにする。
十 幼稚園教育の克実
−自己充実を促す指導−
幼児にいきいきとした活動をさせるためには、幼児が自主的・主体的に活動に取り組み、せいいっぱい活動した