教育福島0073号(1982年(S57)08月)-024page

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という充実感を得させなければならない。そのためには、教師は、幼児の発達の実情をとらえ、今、幼児は何を求め、何を必要としているかを明らかにしたうえで、指導に当たることが大切である。

 

(一) 幼児の活動の姿からその発達を

 

幼稚園の指導は幼児の心身の発達の理解を基本として、指導の内容や方法を考えなければならない。発達を考える時、一人一人の発達の姿と、一般化された発達段階の両面をとらえることが大切である。一般化された発達段階は、一つの物指しであり、幼児の活動の様子や幼児の育っていく道筋を知るうえで必要であり、また指導していく時の目やすともなるが、実際の指導では目の前にいる幼児の発達をとらえ、一人一人の発達に即して指導していくことが大切である。

幼児の発達をとらえるには、

1) 幼児の行動をよく見る。

2)幼児と共に活動する。

3)幼児の立場になって、幼児の心に共感して一緒に動く。

4) 幼児の言葉に耳を傾ける。などがある。

観察に当たって大事なことは、幼児と目の高さを同じにして接することである。そのことによって、

・まなざしから幼児の心をくみとることができる。

・幼児の目に見える物、関心をもつ物などがよく見え、幼児の物の見方、感じ方がわかってくる。

・つぶやきが聞けるので、無意味に見える幼児の行動にも深い意味のあることや、何をしょうとしているかをつかめる。

このように、日常保有の中で幼児の発達をとらえようと努力することによって、幼児の興味・関心、遊びのきっかけや持続時間、次の遊びに移る原因などいろいろな面が見えてくるし、その心の動きも理解できるようになるのである。なお、誤った主観に偏らないように、記録をしながら進めることが大切である。

 

(二) 目的をもって遊べるように

 

「ぼくはこうしたい」「ここまでやりたい」といり自分なりの目的を持って遊べるようにする。活動に目的を持って遊べる幼児は「もうちょっとがんばろう」という気持ちを持って目的達成に挑み・がんばれるのである。その結果、自分のやりたいことが実現できた喜びや困難を乗り越えた充実感や成功感を味わえ、次の活動への意欲となる。目的をもって遊べるようにするには、次のことに留意する必要がある。

1)身辺な生活の中から興味や関心のある活動を選ぶ。

2) 遊びのイメージや課題がはっきりしさ、自分なりに活動に見通しのもてるものにする。

3)新しい物を提示した時、喜んで取り組めるように環境を整える。

4) 遊びのイメージをもてるような助言・援助をする。

5) 幼児の欲求・興味に合わせて多様な活動ができる材料を準備する。

6)必要感をもって取り組めるようにする。

 

(三) 行動を受容的・共感的に

 

幼児の生き生きした姿は教師の働きかけによって変わってくるといわれている。「だめ」というより、「水で遊びたいのね。水はここで使っていいですよ」と幼児の行動や気持ちを認め、受け入れることが意欲につながる。

幼児の行動を認めたり、驚いたこと、困ったこと、うれしかったことなどを受け入れたり、共感したりすることによって、さらに強い興味をもたせることができる。したがって、教師は常に満足感を与え、意欲をもたせるような言葉を意識して話しかけるように努めることが大切である。

 

(四) 幼児同士の触れ合いの大切さ

 

幼稚園生活が楽しいということの一つに、友達関係があげられる。友達と一緒に遊ぶ中で自己を発揮したり、認め合ったり、一人でできないことでもみんなですると解決できる喜びを知ったりなど、互いに刺激し合う中で育っている。このことから教師は幼児同士が支え合い、認め合える関係を作るように心がけねばならない

 

(五) 自主的・自発的な取り組みを

 

幼児に「やって良かった」「またやりたい」という充実感や満足感を味わわせ、次の活動の意欲づけをするためには、他からやらされた活動ではなく幼児自身の考えから生まれた活動を設定する必要がある。

そのためには、興味を誘発する環境の設定が必要である。そして活動の中では、幼児の動きや作品などを認めたり、ほめたりして自信を持たせると同時に、材料や用具の使い方などを工夫させたり、友達関係などが深まるような助言や働きかけをし、より多くの興味を引き出すようにする。また、幼児の活動が一時的な興味で終らないように生活の興味まで高めることが大切である。たとえば、粘土をただなんとなく丸めていた幼児に「お菓子やさんですか」という言葉をかけることによって、はっきりした意図を持たずに遊んでいたことが、「お菓子やさん」というテーマをもって遊べるようになり、より楽しく遊べるのである。

 

(六) 活動の過程を大切に

 

上手な絵をかくより絵をかくこと自体を大切にするなど、自分からかこうとする意欲や態度を認め、育てていく指導が望まれる。そのためには、幼児自身が試行錯誤できる時間を与え、自分でなしえた喜びを味わえるようにすることが大切である。

 

 

 


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