教育福島0074号(1982年(S57)09月)-024page
わたしの研究実践
問題意識を持続させる観察学習
福島市立渡利小学校教諭
鈴木智子
一 はじめに
「先生、水はどれくらい入れるのですか」
このなにげない質問に、
「ここまで入れなさい」と言いかけ、ぐっと言葉をのんでしまった。
それは、ジィガイモの水裁培の学習での一場面である。この一言が、児童の自由で豊かな考え方をおさえ、問題意識を持たないままにただ事実だけを観察し、記録していくというつまらない学習となってしまった数年前の授業が、私の脳裏にあったからである。
植物教材は動物教材に比べ、興味を持って長期観察をさせることがなかなかむづかしい。しかし、児童の植物に対する興味や関心を喚起し、それを高めるような授業を展開できれば、植物教材でも意欲をもって長期の観察をさせることができるのではないかと考えた。
このような考えから、昨年は「いもの育ち方」(四年)、今年は「たねの発芽」(五年)の指導を試みた。ここでは、その実践の一部を述べる。
二 実践例
授業するにあたり、次のことを特に留意した。
(一) 一人一人の予想を大切に生かした授業を心がける。
(二) 疑問を課題意識まで高める工夫をする。
(三) 児童の思考の流れを重視して学習計画を立てる。
〈実践 1〉
・ ひとつの疑問から、観察意欲が高まった例
資料1は、ジャガイモの水裁培で水の量が問題となり学習が発展した例である。
ジャガイモもヒヤシンスのように、水裁培できるのではないかという予想のもとに、それを確かめる装置作りをはじめた。その時、くぼみの部分を水につけたらよいかどうかの質問が出された。そこで、そうしたらよいか考えさせるとともに、その理由について述べさせた。(資料1のア)〜エ)その結果、水の量と芽や根の出かたに視点を変え、くわしく観察することが必要であることに気づかせることができた。
この学習によって、一人一人が予想したことへの期待感が強まり、観察意欲を高めることができた。予想がはずれても、くぼみから芽と根が出たことに驚き、それぞれの考えを修正したり予想どおりだった児童は、条件を変えて観察したりするなど、活動が広がっていった。
資料1 児童の予想と観察結果