教育福島0074号(1982年(S57)09月)-036page

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知っておきたい教育法令

 

女子教員の保護

 

(義務教育課管理主事・丹治勇)

 

一 女子教員保護の基本的な考え方

日本国憲法では男女平等の原則(一四条)がうたわれ、女子が男子と身体的にも精神的にも異なり、感情の作用も社会的機能も異なることはいうまでもないが、このことを理由に、女子教員を差別的に取り扱うことは許されない。労働基準法(以下労基法と略す)では男女同一賃金の原則(四条)が規定され、教員の給与についていえば、他の職業に比べ、とくに男女同一取扱いの原則が確立されているといえる。

ところで、日本国憲法にいう男女平等は単なる性別の違いによる不合理な差別を禁止したものであって、合理的な保護まで排除しようとするものではない。労基法では、女子であることの身体的生理的条件に応ずるため、女性保護という見地から、時間外労働の制限と休日労働の禁止(六一条)、深夜業の禁止(六二条)、危険有害業務の就業制限(六三条)、生理休暇(六七条)に関する規定を設け、母性保護の見地から、産前産後の休暇(六五条一項二項)、妊娠中の軽易労働(六五条三項)、育児時間(六六条)、など各種の保護規定を設けている。

ただし、これらの保護規定は、女子教員が本来の職務に専念し、職務を十分遂行するためのものであり、その職務や責任の軽減をはかろうとして設けられたものではない。

二 女子教員保護の諸措置

(一) 産前産後の保障

◇産前産後の休暇・育児休業については「教育福島」五七年一月号に掲載。

◇つわり休暇 つわりのため職務に従事することが困難な場合に、一妊娠につき一〇日以内の範囲で認められる休暇である。(職員の有給休暇に関する規則)

◇妊娠中の軽易労働労基法六五条の趣旨をふまえ、女子教員の場合には、学校運営全体を考慮し、必要に応じて校務分掌を変更するなど、その負担の軽減を図ることが望ましい。

◇妊娠中の通勤緩和等 通勤に利用する交通機関(特に指定された路線バス等)の混雑の程度が母体の健康維持に重大な支障を与えるものと認めるられるときは、一日について勤務開始時刻より一時間をこえない範囲で職務専念義務が免除される。また妊娠中、出産後の女子職員が保健指導又は健康診断を受けるため勤務しない場合の取扱いについても同様の職専免が認められることとされている。(職務に専念する義務の特例に関する条例)

◇育児時間 生後一年未満の生児を保育している場合、授乳やその他の種々の世話に要する時間として一日二回各々少なくとも三〇分その生児を育てるために必要な時間を請求することができるものとされている。(労基法六六条)

(二) 深夜勤務の禁止

午後一〇時から午前五時までの間における女子の深夜業は、禁止されている。(労基法六二条)

学校においても次に掲げる特別の場合以外、女子の深夜勤務を命ずることはできない。

1)災害その他避けることのできない事由により臨時の必要がある場合(労基法三三条一項)2)盲・ろう・養護学校の寮母(労基法八条一三号)3)女子を収容する寄宿舎の管理人(女子年少者労働基準規則六条二号)

(三) 生理休暇の保障

労基法では「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女子又は生理に有害な業務に従事する女子が生理休暇を請求したときは、その者を就業させてはならない。」(六七条)と規定し、生理休暇が認められるのは、単に「生理日」というだけでなく、生理において、頭痛、腹痛、不快等のため、勤務に従事することが極度に困難である場合と考えられる。そして本人から請求があったときは、その請求された時期に請求された日数を必ず与えなければならないとされている。(本県の規則では、そのつど二日以内の期間を有給としている。)

(四) 危険有害業務の就業制限

学校の仕事の中で危険有害な業務に該当するものは非常に少ないが、女子が母となるためには、衛生上有害な業務を避けなければならないことから、労基法六三条において、女子を一定の危険有害な業務に従事させることを禁止している。

 

 

 


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