教育福島0078号(1983年(S58)01月)-023page
5)「さわガニやザリガニと遊ふ」の展開案(略)
6) 指導の結果と考察(一部)
ア 教科書(原書)では、ザリガニを教材としているが、山間地とあって入手が困難な上に、飼い方もむずかしい。ねらいにせまるためには「さわガニ」でも十分に達成でき、楓収撃木では、ザリガニ五匹、さわガニ五十匹を教材として展開されたので、ひとりひとりが生き生きと活動し、多面的な活動が行われた。
イ 夏休入をひかえ、学級の問題として「夏休み中の生きもののせわをどうするか」という議題が提案され、全員が真剣に問題に取り組み解決することができた。
ウ 遊びも、めあてをもって活動をさせることにより、遊びの方法を知り観察力を高めるものである。
エ この単元での評価は、次のような方法でとらえることができた。
○事前、事後のさわガニの絵から観察力の高まりを評価する。事前から観察力が大きく違う。しかし、さわガニと遊ぶ活動を通すことにより、ある程度まで観察力を高めることができる。また「さわガニと遊んだこと」の作文や絵から、活動面や心情面の評価をすることができる。
オ さわガニを採集する活動は、カニ沢まで十キロもあることから、
〔児童のみつけた「春さがし」の文〕
ひのえまた村の春をみつけたばんやのおばあさんのいえで、しゃくとり虫を見つけました。ぼくとなかよくあそびました。 (てつや)
ありをおうちのまえで見つけました。山の方でも見つけました。
まぐさぶろうとりに、おねえさんと山のほうにいきました。小さいのがたくさん出ていました。 (あき)
きょうしつのちゅうりっぷがさきました。赤いちゅうりっぷでした。そうしたら、花びらがおちてしまいました。
(たかし)
かえるをスキーじょうで見つけました。小さい青いかえるでした。
(けん)
〔さわガニと遊んだことの作文〕
きょう室で、わたしのほうのさわガニと、けんくんのほうのさわガニと、「どこまであるけるか。」きょうそうしました。けんくんたちのほうのさわガニは、大きくてとことことことこあるきます。わたしのほうのさわガニは、中ぐらいで、のっそり、のっそり、まがりまがり、あるきます。わたしは、手でよこになおしました。カニはよこあるきだからです。わたしとけんくんは「がんばれ、がんばれ。」とおうえんしました。わたしが、がんばれとおうえんしたのにまけてしまいました。くやしかったです。さわガニのとんがったはさみは、足より大きくて、むかしつかったはさみみたいです。それにとんがっていてよくきれそうです。水の中に入れるとき、そのはさみで人さしゅびのはらを、はさまれました。とってもいたかったです。
児童に体験させることができなかった。
カ さわガニについては、全員で見て知っている。しかし「アリと遊ぶ」の時と同じように身近に生息して見て知っているが、絵に描かぜると足の数、はさみの位置、目の位置などよく見ていない。よく見る観察力を遊びの中からねらったことは、効果的であり、図画工作科の表現力も尚めることができた。
四 研究の成果の一部
(1) 自然物を対象とした全身的な活動や遊び的な活動を思う存分させると児童は興味や関心をもって、意欲的積極的に経験したことを文や絵に表現すること。
(2) 合科的指導によって描かれた絵や書かれた文は、中心課題が明確で生き生きと表現していること。
(3) 幼稚園で育てられた総合的活動の力が、宝き生きと応用発展されていること。
(4) 低学年の児童には、体験的活動や遊び的な活動を主体とした学習が最適であること。
(5) 合科的指導は、児童の注意力や観察力を鋭いものにしていくこと。
(6) 遊び的な活動が生かされ、児童が主体的に学習に取り組むようになつた。
(7) 理科好きの児童が、多くなったこと。
(8) 自然に働きかける活動に、表現活動や造形活動を取り入れると、理科と国語科と図画工作科の目標を一層効果的に達成できること。
(9) 合科的指導を計画する場合は、発達の特性をふまえて配慮すること。
(10) 体験的活動は、その体験を文や絵動作などで表現することにより、総合的に知識理解の定着がさらに確かになること。
(11) 発想が豊かになり、多面的なものの見方、考え方ができるようになってきたこと。
(12) 合科的指導における評価は、活動主体となるため、臨場評価や作品評価の方法が適している。
五 今後の課題
(1) 実践を通して得た、合科的指導の成果や反省などから年間指導計画や展開案をその都度記録にとどめ、修正、実践、反省を累積して、より確かなものにしていく。
(2) 合科的展開を図った場合の教科の展開と合科的展開の調和をどのようにすれば、さらに効果的にできるのか、課題としたい。
(3) 単元の目標を分析検討し具体的に設定していきたい。さらに、観点をあらい出し、観点別学習評価のあり方を、今後は研究していきたい。