教育福島0078号(1983年(S58)01月)-043page

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知っておきたい教育法令

 

出張

 

(総務課管理主事・古関隆史)

 

一 出張の意味

学校においては、校務のための事務連絡や会議出席、あるいは修学旅行や遠足の引率、就職指導などをはじめ、教職員自身の研修のための各種研修会・研究会への出席など、教職員が勤務校以外の場所で職務を行う必要がしばしばある。一般的に、出張とはこのように、職員が公務のため一時その在勤公署を離れて旅行し、又は職員以外の者が公務のため一時その住所又は居所を離れて旅行することをいう(福島県旅費条例(以下「旅費条例」という。)二条一項五号)。

二 出張命令

出張は、公務遂行の必要から行われる旅行であるから、出張命令(旅行命令)という職務命令によって行われなければならない。職務命令を発するについては、個々の場合において、いちいち具体的な法律や条例の根拠に基づいて行われることを必要としない。すなわち命令権者は、その包括的な権限に基づいて諸般の事情を総合的に判断し、公務遂行のために直接必要な出張命令を発するのであり、出張命令は、命令権者のいわゆる自由裁量行為というべきものである(昭和四十五年六月八日山口地裁判決)。

この出張命令に従わなければならないことについては、地方公務員法三十二条及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律四十三条二項に職員はその職務を遂行するにあたって上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない旨の規定がその根拠となる。

次に、教職員の出張は、服務の一態様であるから、本来服務の監督者(県立学校の職員にあっては、県教育委員会、市町村立学校の職員は市町村教育委員会)が命ずべきものであるが、県立学校の場合は、各学校の実情をよく把握し、教職員を直接指揮監督する立場にある校長の専決事項とされている(福島県立学校の管理運営に関する規則十条一項一号イ)。市町村立学校の場合は、市町村の公立学校管理規則等で、校長が命ずるとされている(市町村公立小・中・養護学校管理規則準則二十三条二項)。また、校長の出張については教育長への届け出をするか、承認を受けるものとされている(前記管理規則三十一条一項二項、前記準則二十三条一項)。

三 旅費

地方自治法二百四条は、普通地方公共団体は公務のために旅行する職員に旅費を支給しなければならないことを定めるとともに、旅費の額及びその支給方法は、条例で定めることとしている。旅費は、旅行の必要経費として支給される金銭で、実費弁償の性格をもち、通常、鉄道賃、車賃、日当、宿泊料、食卓料等が含まれる(旅費条例六条)。市町村立小・中・養護学校の教職員の旅費については、福島県市町村立学校職員の給与等に関する条例十三条で、県立学校職員の例によると定められるとともに県の負担とされている(市町村立学校職員給与負担法一条)。

次に、出張命令は原則として県費予算の範囲内において行うべきものであるとされ(旅費条例四条二項)、出張命令を行う校務の範囲については、昭和三十八年の県教育委員会教育長通知がある(「教職員の服務及び勤務」又は「教育関係者必携」参照)。ところで出張には、第三者から旅費を負担する条件で出張を要請してくるような旅費別途負担の出張があり、この場合命令権者は、その出張の公務執行との関連性など総合的判断のもとに旅行命令を行うべきである。

四 勤務時間及び公務災害との関係

出張中の勤務時間については、出張中といえども勤務時間の規定が適用されるが、出張業務は通常と異なる態様で行われることが少なくないので、本来の勤務時間で律することは困難である。従って、出張中の勤務は、命ぜられた業務を遂行している限りにおいては正規の勤務時間を勤務したものとみなす扱いがされる(労働基準法施行規則二十二条)。

次に、出張期間中の災害については原則として、公務災害補償の適用がある。しかし、旅行中に合理的な経路又は方法によらない順路にある場合とか、これ以外の場合で出張期間中恣意的行為を行っているときに災害にあっても公務災害とはならない(昭和四十八年十一月二十六日付理事長通知)。

 

 

 


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