教育福島0080号(1983年(S58)04月)-034page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

心やすらぐ場所をめざして

 

二本松市立図書館長

山本敏夫

 

図書館コ一ナー

 

図書館コ一ナー

 

二本松市立図書館は昭和五十七年八月一日開館した。福島県の十市二町の図書館の中では、最後尾として登場した。勿論県内では最近続々図書館を設置しようという気運が見られるところである。「図書館」の名は冠せなくとも各地の公民館図書館は、全く同様の活動を行っているが、二本松市も開館まで公民館が実質図書館の仕事を続けて来ていた。中央公民館と五か所の分館がそれである。

新図書館は各館より郷土資料他若干の図書を移管し、新購入分を加えて発足した。各公民館はなお従来の図書室業務を継続してゆくことになる。新図書館は、いわば各公民館の申し子である。

さて新館の外観・内容は重厚華麗であるが、一面図書資料の充実は今後に残され、努力を要するところである。努力とは図書費の配慮と整理業務の二つの面を意味する。

 

本市は地理的には福島・郡山の二大都市の中間に位置し、百三十平方キロメートル、人口約三万四千人の小都市だが、古くは畠山氏、近くは丹羽氏の城下として発展し、両氏の間には伊達・蒲生・加藤氏の支配もあった。静かな市内には由緒ある史跡も多く住民の気風には礼儀正しく落着いた雰囲気が漂っている。また向学の風が強く、個人としてあるいは史談会などを組織して教養にいそしむ姿が眼をひく土地柄である。

館の所在地は二本松駅から徒歩五分の閑静なところにあり市立歴史資料館と隣りあっている。本館は一階に「移動文庫室」がつくられている。これは移動図書館の「基地」で、B・M用の図書を収容しその整備を行う作業室となる。

 

二本松市は市街地以外の市域住民に対する図書館サービスを重視し、五十八年度から図書館車を購入し、巡回活動を開始することに決定した。目下その準備を着々と進めている。いうまでもないが距離その他の障壁のため本館利用の困難な市民への読書の機会を積極的に提供しようとするものである。経験上B・Mを備えるとそれは本館の利用をたかめるそうであるから、新館B・Mと二年連続の施策は二本松市の読書熱をめざましくあおることになりそうである。

開館以来今日までの統計的記録は表のとおである。

 

現今の世相状勢を見ると、とうとうたる消費文化の洪水から脱して、質の高い教養文化を身につけ味わう生活を願う志向がきざしているようにも観察される。地方公共図書館の普及と向上は我々図書館職員の永くせつなく待ち望んだところだったが、このような時期に際会してようやく日の目を見つつあることは相共に欣快の思いに堪えない。

二本松市立図書館の今後の展望としては、さきにその一端を記したが、内部資料の充実とともに従来利用することのできなかった図書館システムの効用そのものを、多数の市民に味わって頂きたいという願いも、その一つである。

つまり、いわゆる「ほん」以外の新聞・諸刊行物・郷土のデータなどもそうであるが、静かな環境で、かけ心地のよい椅子やどっしりした机、広い閲覧室の快適なムードを楽しむことのできる図書館でありたい。人間性活の内面と外面との双方で、古い言葉だが安心立命が怪しくなっている現今、図書館は心やすらぐ場所の一つでもありたいと願って、職員一丸となって努力をしている今日である。

 

 

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。