教育福島0080号(1983年(S58)04月)-045page

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こぼればなし

あとがきにかえて

 

春山は明るく、冬枯れの自然が生気づいている。川面をわたる風も、やわらかさをともなってのどかな風景の中に消えていく。菜の花ばたけの黄色と麦ばたけのみどりとにあいまって、げんげの紅が、見事なだんだん模様をつくりだしている。「春の山うしろから煙が出だした」と詠んだのは、あの数奇な人生をたどった尾崎放哉であったが、なるほど、四季の春は、土匂う土の春そのものである。

 

四月は、学校生活の出発のときであり、新入生はそれぞれ希望と期待に胸をふくらませ、それにほんのちょっとの不安をおりまぜた様子で道をいそぐ。その中でも、黄色の帽子に大きめのカバンを背負った小学一年生の姿が、妙に印象的だ。

新入生といえば、この四月に本県で小学校に入学したピカピカの一年生は、三一、七六一名、中学校では三〇、五八三名であった。いずれも公立関係の数であるが、このうち西会津町立黒沢小学校ほか十四分校で入学児童が一名、中学校でもいわき市立貝泊中学校は一名の新入生を迎えて、昭和五十八年度の教育活動が始まった、大規模校には、大規模校の特色があるように、小規模校には、小規模校の特色がある。それは郡市部であれ山村地域であれ同じことである。教育の一面が、こころとこころの結びつきであるとすれば、たった一人の新入生よ、その清純な心を失わずに、雄々しくはばたいていって欲しい。

 

ところで、もう一つの新入生−小学校三九五、中学校一七九。高校と養護学校等を含めると六六三名の春秋に富んだ優秀な人材が、今年本県ではじめて教壇に立った。彼らに託された使命は大きい。二十一世紀の担い手が、すぐ目の前にいる。未来をひらく心豊かなたくましい人間の育成のため、児童生徒の一人一人を大切に、全力投球で接して欲しいと思う。

歩きつつ風を生みけり新教師 山下妙子

 

ふたたびところで。お届けする「教育福島」誌にほんのすこし変化をつけた。表紙絵は米倉免先生に連続十回の長丁場で「おくのほそみち」を。表紙絵に寄せて作者の語る「ちょっとひとこと」とあわせ鑑賞していただくと、墨彩に秘められた先生の魂がわかるはず。提言も、「はるなつあきふゆ」の四季の移り変わりの中でそれぞれの立場から、なるほどとうなずけるものをお願いした次第。日本学士院会員・文化功労者の高橋信次博士、永世クイーンの堀沢久美子さん、東京芸大在学中に安宅賞受賞の日本画家今井珠泉氏、手織座主宰宝生あや子さんなど文字どおり各界でご活躍の多士済々。表紙絵、グラビア、巻頭言、提言と心なごんだところで特集記事に目をとおしていただければと思う。

春一番が去って、桜前線が通り過ぎていった。春の愁いがさわやかな活動にとってかわる季節が、足音をしのばせてひそやかに、もう、すぐそこにきている。

(ひ)

 

 

 

 

 

 


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