教育福島0081号(1983年(S58)06月)-005page

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巻頭言

 

親父族頑張れ

 

鈴木完一

 

鈴木完一

 

近年、青少年自身のパーソナリティの変容、及び現代社会の構造上のひずみから発生する諸問題のために、青少年をとりまく社会的環境は著しく悪化している。この現象は我が国ばかりでなく世界的であり、すべての国々で対策に苦慮している状況のようである。とりわけ、これらが原因によって派生した非行化問題は現代の大きな社会問題として取り上げられている。国会においても特別公聴会が開かれ、県議会にも特別委員会が設置され、県教育委員会においても県社教委員の会議をはじめ、各種の審議会にその対策を諮問しているところである。また、民間主導による青少年健全育成協議会や市民会議の設置など、今や国民あるいは県民総参加による対策がなされようとしている。このことは現代の風潮が、無、責任時代、逃避社会といわれている様相のなかで、すべての大人が自らの問題として青少年非行化問題に真剣に取り組み始めたところに大きな意味を見出すのである。

この青少年健全育成運動が官民こぞって推進され、定着し、成果を収めるのには、言いふるされているが、やはり家庭環境の改善が要求され、両親の理解が必要となってくる。特にこれらの兆しに立ち遅れている父親の理解と協力が必須的条件である。

戦後の父親は、家庭における経済権を放棄したばかりでなく、父親としての教育権までも放棄し、単なる働き蜂に逃避しているといわれている。このことが極端に言えば、今日の家庭教育の荒廃を招き、青少年の非行化に拍車をかけたとさえ言われている。

家庭はいつの時代でも青少年の人間形成にとって大切な基本的役割りを果たす場であるだけに、父親の領域、母親の領域をよく把握し確固たる教育観を築く必要がある。

ここに安易ではあるが、「た」の字のつく四つの父親像を提唱し、家庭教育の指針にして頂きたいと思う。

一、(た)めになる仕事をする父親であってほしい−殷鑑遠からずの言葉があるが子供は身近な両親を畏敬し、・憧れるものである。総理府統計局の調査した理想的な父親像の第三位にランクされるほど子はこのことを望んでいるのである。社会性のある心豊かな人間形成を図るうえからも父親に期待したいものだ。

二、(た)よりにされる父親であってほしい−地域社会、職場、家庭の中で、たよりがいのある父親であってこそ相互信頼が生まれてくるのではないだろうか。

三、(た)のしい、朗らかな父親であってほしい−厳しさの中にもユーモア、ウイットを入れた明るい家庭の中からは非行は生まれないものである。

四、(た)すけあう心を持った父親であってほしい−家庭において、助けあう心を醸成することによって、子供に連帯感が生まれ、博愛の情が育つものと考えられる。

とにもかくにも一家の柱であるどこの父親も、自覚と自信を持って家庭教育に参画し、子女の健全育成の基盤を形成できるような時代の到来を祈ってやまない。

(すずきかんいち・県社会教育委員の会議議長)

 

 

 


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