教育福島0081号(1983年(S58)06月)-014page
となく、場合によっては学校のカベをはずして対応がせまられることも少なくない。
日ごろから、校内のさまざまな集団を的確に把握し、健全化を図ることが大切である。また、校外の集団とのつながりなども、事前に把握する工夫も大切である。
(7)家庭、地域社会、関係諸機関との連携、強化
非行等の芽は、すでに幼児期から小学生のころに芽生えていることが少なくないし、この芽は、小さいうちに摘み取ることが大切なはずである。この意味からも、次の諸点の努力が望まれる。
第一に、家庭との連携を深め、授業参観、学級、地域懇談会、父母研修会親子面接などを通し、自分の子どもの学習や進路にのみ関心の向きがちな父母の啓発に努めることが大切である。
第二に、PTAとの協力関係の強化である。PTAは、生徒の校外指導、地域環境の浄化などを本来の目的とする団体であることを確認し、正しい育成を図るとともに、協力関係のいっそうの強化が望まれる。
第三に、地域と学校、関係機関との連携の強化である。
戦後、地域の連帯感の不足による子どもたちへの教育機能の低下がさけばれている。他人の子どもも、自分の子どもと同じく声をかけられる地域の機能の回復に努力したいものである。
学校で行う生徒指導や教育相談には対象、方法、問題の程度などからくる限界がある。病院、児童相談所、警察その他関係諸機関との連携を密にし、事態が深刻化しないうちに対策を構ずるべきである。
おわりに
沖原豊氏(広島大学教授)によると、世界的に見て、わが国の校内暴力の病状は、重症国(対教師暴力、生徒間暴力、器物破壊の三要素が発生している国)の部類に入るという。それはアメリカを先頭とした先進自由主義諸国にこの重症国が多いという。
しかし、アメリカの校内暴力もこのところ好転の兆しが見えてきたとのことである。
戦後第三のピークといわれながら、上昇をつづけているわが国の校内暴力や少年非行もこの辺でぜひくいとめたいものである。
各学校の一層の努力を期待したい。
次に紹介するのは、県教育委員会指定の生徒指導研究学校と地区の研究内容である。いずれも、今年度に発表会を予定しているが、各学校の実践の参考としていただければ幸いである。
〈文中使用の各表は、「もう一度考えよう」(ふくしまけんけいさつ)からの引用である。〉
「基本的生活の習慣化をめざす生徒指導」
−日常生活にねざしたよりよい生活の習慣化をめざして−
いわき市立豊間中学校
一 はじめに
本校は、過去において生徒による多くの問題行動の発生を見、その対策のための厳しい試練にさらされるという苦い経験をもっている。
以来、本校では、生徒による「問題行動の防止」を最重点とし、地域ぐるみの生徒指導に全力を傾け、父兄はもちろんのこと、関係各種団体機関との連携強化、活動の活発化のための学校側の積極的なはたらきかけや、地域ぐるみの補導、懇談会、情報交換など学校主導の活動を展開してきた。
数年間にわたるこれらの努力は、地域住民の教育への関心を積極的なものとし、学校への強い協力体制を基盤とした本校の教育活動を具現するという成果をもたらした。
しかし、「積極的生徒指導」という観点から検討を加えれば、これから取り組まねばならない課題が多いことも事実である。昭和五十七年度より二カ年にわたる県教育委員会指定の生徒指導の研究をすすめるにあたり、これまでの指導の見なおしをするとともに、本校の教育目標の具現化を一層確かなものにするための生徒指導に鋭意努力することとした。
以下、初年度の研究、実践のあらましについて紹介したい。
二 地域の特色
本校の学区は、いわき市の最東端に位置し、昔から小規模な沿岸漁業がさかんである。それにともない、水産加工もさかんとなり、経済的には比較的恵まれた家庭が多い。
更に、近年は交通の便もよくなり、他地域との交流が多くなってきており特に、夏は海水浴客でにぎわい、民宿も多く、観光の町としての一面を備えてきている。
地域民の学校教育に対する関心は最近特に高まり、PTA活動も極めて協力的である。しかし、反面、学校への依存度はかなり高く、家庭教育には問題が多い。
三 研究主題設定の理由
本校生徒は、総じて素直で人なつこく、教師に対して信頼を寄せている。人間関係の面では、小学校以来の同じ顔ぶれのため、家庭的で落ちついては