教育福島0081号(1983年(S58)06月)-028page
わたしの研究実践
発想を大切にした量感ある表現をめざして
猪苗代町立猪苗代小学校教諭
奥 庄一
はじめに
彫塑における表現は、心象表現であり、ひとりひとりに意欲がなければ心は開かないし、心が開かなければ表現活動は成立しない。
「何だろう」「おもしろそうだ」
「やってみよう」「どうして動いている感じがしないのだろう」「もう少し腰を曲げてみよう。」「よし、うまくいったぞ」…
といったように、表現活動に意欲をもち、材料にはたらきかけ、疑問を持って試行錯誤をくり返しながら、自分の力で主題に立ち向かう自己表現を期待したい。そして、自己の表現に対する喜びをいっそう深く味わわせたいと考える。
一 研究内容
子どもたちは、ものを見て平面にかき表すという活動には慣れているが、立体を感覚的に受けとめ、それを立体で表すという活動には不慣れである。つまり、対象を視覚のみでとらえようとするため、厚さこそあるが平面的な表現になりやすい。そこで、視覚のみでとらえるのではなく、触感覚を通したとらえ方をさせることにより、立体感覚を養い、量感のある表現力をつけさせたいと考え次の仮説を設定した。
(一) 子どもに興味関心を持たせ、表現意欲を喚起するような立体資料の提示を工夫する。
(二) 個の想を深めるために立体資料を効果的にとらえさせる発問の工夫をする。
(三) 見通しを持って表現させるための表現カードの活用を工夫する。
(四) 表現の喜びをいっそう深めるための指導過程の組織を工夫する。
二 研究実践の概要
−一年「ともだち」の場合−
(一) 大きな立体資料の提示
(大きなダンボール箱を準備)
T、「秘密の箱の前に集まってごらん」
「今日のは大きいよ」
C、「何だろう」
T、「何が入っているだろうね」
C、「先生、はやく開けてみて」
T、「大きな人かな、それとも動物かな」
T、(だまってふたを開け「八郎」を提示)
C、「うわっ、すごい、八郎だ」
C、「大きいなあ」
C、「とっても強そう」
C、「太い足だなあ、指も太くて強そうだね」
C、(近よって、さわってみる)
T、(無言で子どもの動きを見る)
略
立体資料の提示は子どもたちに興味と関心を持たせ、感動をもってとりくませることができた。その第一は、子どもがよく知っており、親しみを持っている「八郎」を登場させたことにある。第二は、粘土特有の材質を持つ大きな立体資料を提示したことである。この大きな立体の力強さと迫力が子どもたちを引きつけたものと考える。
(二) 立体資料を効果的にとらえさせる発問
1) 期待感を持ってとらえさせる無言の発問
「八郎」の提示によって興味関心を深めるため、提示のタイミングと無言の発問を試みた。
「何が入っているだろう」「はやく見たいなあ」という期待感を持たせ、それに答えられる立体資料の提示によって学習意欲を喚起させることができた。
資料の提示における発問はより精選しなければならない。資料は子どもを引きつけ、それが何であるか、自分なりにとらえさせることが大切である。そのために、資料の提示によって「何だろう」「何をしているところだろう」「足が太くて強そう」など、自由に思いめぐらす機会を十分与えるようにした。つまり、資料を十分にうけとめさせることが先決であり、子ども自身の目と手でとらえさせるため、導入段階での無言の発問を試みたのである。
2) お話にのせるための発問
「八郎」の使命は、子どもをお話にのせ、夢の世界へ導くことでもあ