教育福島0081号(1983年(S58)06月)-029page

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る。そのため、「八郎」は大きくて力強い人間としてとらえられなければならないし、子どもたちが親しみを持つと同時に、かかわりの深いものでなければならない。

「この八郎にどこかへ連れて行ってもらおうか」の発問に対して「うんそうしよう」の反応が得られるための資料と発問でなければならない「八郎」の案内にまかせ、お話の中へ導くために、音楽効果と発問の関係をも吟味してすすめた。

T、「大きくて、力もちの八郎にどこかへ連れて行ってもらおうか」

C、「うん、そうしよう」

C、「どこへ連れて行ってくれるの」

C、「本当に連れて行ってくれるの」

T、「みんなでたのんでみよう」

C、「八郎にみんなのれるかな」

T、「八郎は力もちでしょう。それに大きな体ですから大丈夫よ」

C、「そうだね」

T、「目をつぶってごらん」

(音楽効果−波の音、八郎の海を行く足音)

T、「しっかりつかまってよ」

T、「あっ、島が見えてきたよ。あの島に行くのかな」

(海岸におしよせる波の音)

C、「うわっ、海岸だ、貝がらがある」

C、「あっ、本当だ」

「秘密の箱」……「何が入っているだろう」「今日のは大きいよ」の発問によって、期待感を大きく持たせることができた。資料と発問によるはたらきかけは、子どもをひきつけるのに効果的であった。また、無言の発問は「八郎」と結びつけ、立体を肌で感じとらせることができた。

「どこかへ連れて行ってもらおうか」の発問によって、子どもたちは話にのってきた。そして「八郎」に案内された美しい島でのできごとを夢中で表現することができた。

(三) 見通しを持って表現させるための表現カードの活用表現カードは、中、高学年にのみ使

用したので、ここでは省く。

(四)、成就感を与える場を考えた指導計

表現活動は、自分の主題に向かって表現できることに大きな喜びを感じるものである。さらに、つくり上げた作品を使ったり、飾ったりすることは、いっそう喜びを大きくするものである

お話の中での遊びの場面を再現することは、この期の子どもにとって、この上ない喜びであり、いっそう楽しみを広げることになる。この遊びの活動を通して、友だちの作品にも目を向け表現のよさにも目を向け、鑑賞眼も育てたいと考えた。

T、「作品を持って行って、海岸で遊ばせようか」

C、「うん、そうしよう」

C、「先生、八郎も連れて行こう」

−別室にお話の場面を再現−

(大きなほら穴、木、海岸、砂浜など……教室いっぱいに作成)

C、「うわっ、広いなあ」

C、「ほら穴もある」

C、「遠くに船も見える」

それぞれ、自分の遊んだ場所に集まり、楽しかった遊びを再現している。

お話の中に出てきた楽しい遊びの場面を立体で構成したスケールの大きな場面と情景に、子どもたちは感動し、それぞれの遊びにおけるポーズを再現し、自分の作品に語りかけ、友だちの作品や「八郎」に語りかげながら、ゆがんだ形をなおし、だれの指示もなしに遊びのポーズに修正を加えている姿は、満足感そのものであった。

 

おわりに

 

(一) 立体資料の提示は、子どもの表現意欲を刺激し、自分で追究しようとする手だてとして有効にはたらくものとして確かめられた。

(二)、「どうしてそう感じるだろう」「どこから、そう感じるのだろう」など、考え方や、感じ方の根拠を明らかにしようとする発問は、学年の発達段階に応じて、工夫してきたが、こうした学習訓練は多くの表現活動を通して身につけさせなければならないと考える。

(三)、粘土による学習は、教室や衣服をよごすなどの扱い上のわずらわしさから敬遠されがちであるが、子どもにとっては、最も喜びの大きい学習である。私たち教師は、もっと積極的にとりくみ、子どもに限りない喜びと豊かな表現力を身につけさせるために、指導法の研究と改善に努力しなければならないと考える。

 

「かいがらひろい」

「かいがらひろい」

 

「八郎」(高さ1メートル)

「八郎」(高さ1メートル)

 

 

 


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