教育福島0101号(1985年(S60)06月)-019page
次の五点を実践の方法として取り上げた。
○ 学級活動、特に短学活の時間の指導を工夫し、聞く態度を育てる。
○ 各教科、道徳、学級指導、学級会活動などの時間では、教師中心でなく、生徒に活動の場を与えるような指導過程を組織していく。
○ 話し合いの仕方をよく指導し、そのルールをよく守らせる。
○ 教育相談や班ノートなどを通じて教師対生徒の人間関係を深める。
○ 実践目標に対するアンケート調査を行い、生徒の意識や変容を把握する。
(ウ)授業について
授業の改善によって、生徒の学習意欲の向上を促し、積極的な学習習慣を身につけさせるという観点から、いわゆる「わかりやすい授業」を目指した授業研究を進めていくことにした。同時に、授業の中で、相手の話に「よく耳をかたむける」を実践させ、さらに自分の考えをしっかり話し、一人一人が積極的に授業に参加できるように努めた。
また、授業を一斉学習の形態から少しでも脱皮し、一人一人の生徒が課題意識を持つで学習できるように、各教科は各教科部会を中心に、道徳、学級指導、学級会活動は各学年部会ごとに授業研究に取り組み、授業の改善に努めた。
(三)研究の成果
二年間におよぶ研究・実践は試行錯誤の連続であり、その成果は微々たるものでしかなかったが、次の諸点については、前よりわずかながらの前進を見ることができたと受けとめている。
1) 生徒指導の大切さを教師各自がしっかりと受けとめ、ひとつの事例に対する共通理解や情報の交換も、従前に比べ密になった。問題傾向を持った生徒を含め、一人一人の生徒に多面的に対応しようとする気運ができつつある。
2) 実践研究を積み重ねていく過程での各種の検査、調査、あるいは.対話の中から、本校生徒の姿をより深く知ることができるようになった。
3) 実践の過程の中で、初めは半ば強制的にやらされたという感じを持っていた生徒も次第に関心を示し、生徒会活動の中にも波及効果が認めちれるようになった。また、学校行事や集会活動などにも、従前より積極的な参加態度が見られるようになってきている。
4) 短学活時のスピーチなどをとおして、相手によくわかるように話す大切さと、相手の話そうとする内容を理解しようとする過程で、生徒間に温かな人間関係が育ちつつある。
七、まとめ
ここに紹介した内容は、本校における二年間の研究・実践の概要である。当面の研究・実践の期間は終わっても、解決を迫られている課題の多さに驚き、どう対応すべきか懸命にその糸口を探がしている毎日である。
さらに、次の諸点を今後に残された課題としてとらえ、着実にひとつひとつ実践を積み重ねていぎたい。
1) 生徒指導部、学習指導部が取り組んできた実践をもとに、それを維持するとともに、より発展的な目標を目指して、今後も継続した研究・実践が必要である。
2) 教師の姿勢が生徒から厳しく見つめられるようになってきており、教師自身が襟をただし、変容すべきことがらも多い。また、生徒と教師が共に学ぶという「師弟同行」の姿が前にも増して強く求められるようになってきている。
3) 生徒の自己指導の能力を育てるために、リ−ダ−の養成や多くの場をとおして生徒相互の連帯感を高める努力が必要である。
4) 教育相談をより一層充実させて、さらに生徒の心に触れることができ、共感的な理解のできる教師を目指す必要がある。
5) 家庭生活の影響やテレビ、マスコミの影響が学校教育のそれを上まわるといわれている今日においては、地域、家庭、学校の連携を一層緊密にして、望ましい形での自己実現が図れる生徒の育成に努力する必要がある。
おわりに
生徒指導は、児童生徒の学校生活を充実させることによって効果的に行われる。この場合、生徒指導が特段別な形で行われているのではなく、児童生徒の学校生活を充実させる過程で、生徒指導もおのずと結果として効果的に行われていくある。相川高雄氏(筑波大)によると、相川氏は校内暴力等で荒れた学校を見て、学校は、緑豊かな環境、清潔な環境、信じ合う人間関係、秩序正しい行動、正常な教育活動など、うるおいのある、豊かな学校生活を送れるように経営することが基本に置かれなくてはならないという。
このような学校観を参考に、毎日の教育活動の中で起きてくる問題に対して、児童生徒を生かすためにどうすべきか、どうすべきでないかを真剣に考え実践していく姿勢が大切ではないだろうか。