教育福島0101号(1985年(S60)06月)-039page

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○作物栽培の基礎的な技術を学ぶ。

2) 基本方針

○新規造成の圃場でも簡単に作れるる作物

○生育過程に変化があって、楽しく手入れができるもの

○生徒の希望もとり入れ、収穫・試食が楽しめるもの

3) 計画(省略)

4) 指導上の留意点

○野菜栽培のテキスト作成

○農具のうち、特にフォーク、かま、くわ等は危険が伴うので、現場で使い方を指導する。

○生徒全員に一括購入の長ぐつを使用させ、汚れと危険防止に備えた。

5) 活動状況

本校に入学した当初は、普通科高校なのになぜ野菜作りなどをするのか理解できなかった。生徒も体験時間の経過とともに作業にもなれ、級友や教師と談笑しながら、にぎやかに生き生きと活動するようになった。特に試食会は、最も楽しいひとときであり、この体験を契機に、以後はもっとまじめにやらなければ、と作文に書いている生徒も少なくない。

6) 成果(作文・アンケートから)

〇野菜作りで、まく時期と収穫の時期がわかった。

○種まきのときは、収穫できるかと疑った作物が、見事に実って驚いた。

○自分たちで作ったサツマイモやスイカは格別おいしい。

○おぼえた栽培法を生かして、将来自分でも作ってみたい。

○家庭で子供が試食のことを話すので圃場を見に来た父母が十一名もあった。

○教師間に野菜作り熱が高まった。

7) 課題

○指導する教師が素人ばかりなので、栽培の基礎理論の研究が必要である。

○作業内容を細分化して、級友のやることを見て学ぶとか、作業と休息を組み合わせて学習の定着を図る。

(二) コンニャク製造(栽培に継続して)

1) ねらい

○畑作物としてのコンニャク玉は、生子(球根)から売り玉になるまで四年から五年かかる。物を育てる苦労と収穫の喜びを体験するには絶好の作物なので、三・四年の種玉を圃場に栽培した。この材料を使って、原料栽培から製品完成までの一連の作業を通して、製作過程の驚きと完成の喜びを味わう。

2) 方針・留意点

○製造過程では家庭科の指導を受ける。

○製品は家庭に持ち帰らせる。

3) 対象・活動計画等(略)

4) 活動状況

二学年一斉に展開した。生徒は活気に満ちあふれ、アンケートの結果でも最も人気のある活動であった。

5) 成果

ねらいを上回る成果であった。店のコンニャクよりおいしいと家庭でほめられたり、コンニャク栽培農家から加工法をたずねられたり、PTAの会合でも話題にのぼり賞賛された。

6) 課題

学習効果の高い種目で継続したいが種玉の確保が困難である。

 

三、研究の成果

 

(一) 勤労体験学習を教科・特別活動・家庭クラブ・部活動・同好会にまで活動の輪を広げることができた。

(二) 生産的学習においては、除々に、しかも確実に勤労の習慣が育ってきた。作物栽培の知識や技術が身につき、収穫・試食の満足感を味わうことができた。

(三) 製作・加工においては創造の喜びを、環境美化、奉仕活動においては環境美化への意欲、社会奉仕の精神を、啓発的経験活動においては職業への関心がわき、自己の将来設計声真剣に考えるようになった。

(四) 勤労の場を通して、生徒と教師、生徒相互の信頼感が生まれ、生徒指導の効果をあげることができた。

(五) 日常の授業においても積極性や自主性が見られるようになった。

(六) 地域の関係機関やPTA等の協力により、勤労体験学習が円滑に行われ、地域に根ざした学校づくりをすすめることができた。

(七) 本校には勤労体験学習が是非必要だという共通理解により、全校あげての推進体制ができ、計画的、組織的、継続的に勤労体験学習をすすめることができた。

 

四、今後の課題

 

(一) 現在実施している教科から、全教科へと勤労体験学習内容の拡大を図る。

(二) 生徒の自主的活動を更に活発にするため、勤労体験学習の内容を精選し、めん密な計画のもとに実践する。

(三) 勤労体験学習の評価・方法を工夫する。

(四) 生徒の勤労観・職業観の育成と、その深化のために継続して研究・実践する。

 

おわりに

 

県内の研究推進校・推進地域の実践状況の概要を個々に紹介したが、これらの実践を土台として、今後各高校及び地域の実態に応じたきめ細かな計画のもとに指導を進め、高校教育の発展、充実に努めてほしい。

 

 

 


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