教育福島0101号(1985年(S60)06月)-041page
3)前年度指導要録の算数の総合評定が三以下の児童
(2)事前調査の実施と考察
●S−P表による考察
1)無得点者が八名おり、答の予想がつけにくいことがいえる。
2)注意係数が○・五を超える児童が数名おり、何らかの原因が考えられる。
●観点別正誤表による考察
1)知識・理解面はやや良いが、思考面は全くできていなかった。
2)下位群の中に、中位群の児童が数名いた。
以上の結果から、本単元は予習しにくく、全員がほぼ同じレベルでスタートできるが、習得が難しい単元であるともいえる。
(3) おくれがちな子の実際
1)(1)の条件から選んだ七名の児童の事前調査のデータから個々の特長をおさえておく。
2)学級を上位群・中位群・下位群の三群に分け、特におくれがちな子のいる中位群・下位群のレベル設定をしておく。
(4)指導過程(資料2)
(5)授業(省略)
(6)事後テスト
1)各群の伸びを比較して
事前調査の結果、各群がほぼ同レベルだったので、中位群・下位群が上位群に近づくことを期待したが、上位群に対しても同様の効果があったので、差は縮まらなかった。
2)単元の性格を考察して
「小数のかけ算」と同様の組み立てをしたが、わり算はやはり理解が難しいので、下位群の効果が低かった。わり算はかけ算の裏返しではないことがわかる。
3)おくれがちな子について
クラス全体と比較して技能・思考面ではやや劣ったが、知識・理解面では上回っていた。
(7)追指導(省略)
(8)事後テスト(2)
追指導後、事後テスト(2)を実施した。目的は、おくれがちな子を中心に落ちこんでいた部分の定着の程度を調べるためである。
S−P表で二つのテストを比較してみると、平均正答率が○・六から○・七一に改善されていた。
1)差異係教は○・一五九で、指導の
効果が認められた。
2)注意係数は、ほとんどの子が○・五以内に入っており、学習が安定していたことが認められた。
3)おくれがちな子について
事後テストにおいて、伸びが一番の児童もおり、平均でも四問伸びていた。おくれがちな子は中位群と非常に似た数値を示し、中位群のレベルまで伸びてきている。
特に、おくれがちな子の中で選んでいた抽出児は、下位群から中位群に入れるまでに伸びてきた。
追指導の効果は明らかにあった。
五、成果と今後の課題
(1)成果
はたらきかけは、特定の児童のおくれる原因をつきとめ、対処する手だてを考えて行うものであるが、それは、対象外の児童に対しても十分な効果を与える。上位群の児童でさえも、生き生きと活動する姿が見られた。
本校では、おくれがちな子を数的にとらえ、その原因を単元構造表の到達度評価問題集を使って調べられるのでつまづいた児童に対する効果的な指導が一層容易に、かつ、早くできるようになった。
また、事前調査と事後テストをS−P表に表し、各群を学習効果生指標に表すことにより、単元を通しての児童の変容を数的にとらえ、以後の指導に役立てられるようになった。
(2)今後の課題
実践を他領域まで伸ばすこと、楽しく、また、わかりやすい授業を展開するために、学習上の問題点とはたらきかけとの関連をさらに研究すること、評価から、より正確な指導のあり方を考えること、などの点を考えて、今後の指導にあたっていきたい。
資料2指導過程(一部省略)