教育福島0102号(1985年(S60)07月)-018page
るなどして、社会的適応性を助長し、社会に参加していくための知識、技能及び態度を養うことに重点をおいている。
教育課程の特色は、一言でいえば生活中心ということができる。抽象能力の発達が遅れているので、小・中学校等の児童生徒のように教科の内容を系統的に学習していくことが困難であるので、具体的な生活経験を通して学習させる必要がある。
また、指導に際しては、児童生徒の障害の特性により、学習の集団編成に配慮したり、教材・教具や補助具の改良、開発を行うなどの工夫をしている。
●肢体不自由養護学校
肢体不自由養護学校では、小学部、中学部及び高等部が設置され、小・中・高の一貫した教育が行われている。
また、障害の状態や発達段階の多様な児童生徒が、可能な限り自らの力で学校生活が送れるよう、施設・設備にさまざまな配慮がなされている。例えば、校舎は平屋建てで、廊下やトイレは、車いすや松葉づえで移動しやすいようになっている。
児童生徒の肢体不自由の状態等は、一人一人異なっているため、個人差を考慮した指導が重視される。例えば、個別指導やグループ指導を積極的に取り入れたり、障害の状態に即した教材・教具を開発・工夫したりするなどの配慮がなされている。特に、教材・教具については、筆記用具や定規等を使いやすく工夫することはもちろんのこと、電動タイプライターや計算器といった補助用具を活用するなどして、学習への参加を積極的に促すよう工夫している。
●弱視特殊学級
病弱養護学校は、医療機関に併設しており、在学する児童生徒の病気の種類は様々である。気管支喘息・腎臓疾患等が多くなっている。また、近年は脳性まひや精神・神経疾患が増加するとともに、心身の障害の状態が重度・重複化する傾向がみられる。
児童生徒は、治療、検査及び各種の生活規制のために、一般に授業時数の制約、身体活動の制限及び直接経験の不足などを伴っている。このため、教科指導においては、指導内容を精選したり、指導法や教材・教具を工夫したりして、学習効果を高めるように配慮している。
また、病状が重いため通学できない児童生徒に対しては、病室などで授業を行ったり、閉回路テレビなどを利用して学習させたりするなどの配慮もしている。
児童生徒は、入院等によって、社会経験が不足しがちなので、特に特別活動の指導では、校内・校外においてさまざまな経験が得られるよう配慮している。
楽しい調理実習(いわき養護学校)
(3) 特殊学級における教育
●病弱養護学校
弱視特殊学級は、視覚障害の程度が比較的軽度な児童生徒を対象として、小学校や中学校において特別に編制された学級である。弱視特殊学級においては、照明や書見台などに工夫を加えて見やすい条件を整えるとともに、上手な見方を育てるための特別の指導や配慮を行いながら、教科指導などがなされている。
また、弱視特殊学級は、小学校に設置されているので、通常の学級の児童生徒と活動を共にすることが比較的容易にできる。このため、各教科や道徳特別活動などの指導は、弱視特殊学級と通常の学級との密接な連携のもとで行われている。
●難聴特殊学級
難聴特殊学級においては、聾学校の児童生徒より比較的聴力損失の軽度のものを対象としている。難聴特殊学級の指導は、聾学校と同じように、ことばの指導が中心になるが、その方法に相違がみられる。聴力損失の程度が軽度であるため、まず残存する聴力を活用する補聴器の装用訓練や音やことばの聴取訓練、更には、弁別訓練に重点がおかれる。
また、発音発語指導や話しことばの指導も行われ、児童生徒によっては、視覚的な話しことばの読み取りの指導も行われる。
難聴特殊学級の指導形態には、児童生徒が主として難聴特殊学級でほとんどの指導を受ける形態もあれば、普段は通常の学級において指導を受け、週に教時間、難聴特殊学級で特別な指導を受ける形態などもあり、児童生徒の障害の状態などに応じてさまざまな工夫のもとに行われている。
●精神薄弱特殊学級
精神薄弱特殊学級は、精神発達に遅れのある状態が軽度の児童生徒を対象にしている。精神薄弱特殊学級の教育は、一般に児童生徒の障害の特性に即して、特別な教育課程を編成するとともに、指導方法に工夫をこらしている。
小学校の精神薄弱特殊学級では、健康な体づくり、基本的生活習慣の確立社会生活に必要な言語の理解や表現などが指導の中心になっている。また、通常の学級の児童と活動を共にする機会を多く設けて、集団生活への参加が