教育福島0102号(1985年(S60)07月)-033page

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わかりやすい教育法令

出席停止

 

家庭謹慎・自宅学習措置はできるのかな?

 

一、出席停止の意義

公立の小学校及び中学校について、市町村教育委員会は、性行不良であって他の児童生徒の教育に妨げがあると認める児童生徒があるときは、その保護者に対して、児童生徒の出席停止を命ずることができることになっています(学校教育法第二六条・第四〇条)。

この出席停止の制度は、本人に対する懲戒という観点からではなく、学校の秩序を維持し、他の児童生徒の義務教育を受ける権利を保障するという観点から設けられているものです。

なお、学校保健法第一二条は伝染病に関する出席停止について規定していますが、ここでは学校教育法関係に限って述べることとします。

二、出席停止の運用

最近の校内暴力等児童生徒の問題行動に対処するため、文部省は、昭和五八年十二月五日付で、「公立の小学校及び中学校における出席停止等の措置について」という通知を出しました。

通知では、「…学校において最大限の努力を行ったにもかかわらず、児童生徒が性行不良であって他の児童生徒の教育に妨げがあると認められる場合にあっては、教育的配慮を十分に行った上、法令に定める出席停止の措置をとる等適切に対応することが必要である…」としています。以下、通知に従って出席停止運用の基本の主なものについて述べてみます。

1 学校における指導

学校においては、すべての教職員が一体となって、問題行動を起こす児童生徒に対し出席停止の事前・期間中・登校後にわたって、きめ細かな指導を行う必要があります。その他、児童生徒それぞれの個性や能力に応じて校内における特別指導を行うことも効果的であろうと考えられます。

2 出席停止を適用する要件

出席停止を適用するに当たっては、制度の趣旨にそって学校の秩序を維持するという観点に立たなければなりません。この判断は、個々の事例に即して具体的にしかも客観的に行われなければなりませんが、一つの目安としては、次のような状況にあることが適用の要件として考えられます。

児童生徒が次の四項目の行動を起こし、授業その他の教育活動の正常な実施が妨げられている状況にあること。

(1)教職員に対する威嚇、暴言、暴行等 (2)他の児童生徒に対する威嚇、金品の強奪、暴行等 (3)学校の施設・設備の破壊等 (4)授業妨害、騒音の発生、教室への勝手な出入り等

3 出席停止の措置の適用の決定

前記適用要件があると認められるときには、事実の把握に努め、(1)校長の判断の尊重 (2)学校秩序維持のための必要性 (3)他の児童生徒の動揺が増大しないような適時性等に留意して適用するか否かを決定することが必要です。

なお、決定されたら、当該児童生徒や保護者に出席停止を告げ、弁明の機会を持つことが望ましいといえます。

4 出席停止の期間

この期間は、個々の事例により異なるものですが、著しく長期にわたることのないよう総合的な判断の下に決定することが必要です。

三、出席停止の手続

出席停止の措置は、直接学校教育法の規定に基づいて行うことができますが、その適正な運用を図るためには、出席停止の措置の決定の手続に関する規定を市町村公立学校管理規則等に設けておく必要があります。

そこで、本県においても昭和五九年二月一三日付教育長通知により管理規則準則の一部改正を行い、「校長は、性行不良であって他の児童生徒の教育に妨げがあると認める児童生徒があるときは、教育委員会に報告又は出席停止についての意見の具申をしなければならない」と定めました。これにより市町村教育委員会は規則の改正を行い、校長の報告又は意見の具申を受けて速やかに、出席停止を命ずるか否かを決定することになったわけです。

 

質疑応答

 

問 公立の小・中学校において、問題行動を起こした児童生徒に対し、「自宅謹慎」とか「自宅学習」等の措置をとることができるのでしょうか。

答 学校教育法第一一条では、教育上必要があると認めるときは、校長及び教員は、児童生徒に対し懲戒を加えることができることになっています。しかし、学齢児童生徒に対する懲戒として退学及び停学の措置をとることはできません(同法施行規則第一三条)。

したがって、「自宅謹慎」「自宅学習」等の名称であっても、実質的に停学に当たる措置は、法令上禁止されているので、できません。

 

 

 


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