教育福島0103号(1985年(S60)08月)-042page

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研究実践

 

レポート

 

数学的な考え方を

身につけさせるには

 

富岡町立富岡第一中学校

教諭佐々木健二

(現・相馬市立中村第二中学校)

 

−解説−

 

本論文は、昭和五十九年度公立幼・小・中・養護学校教職員研究論文の入選論文です。研究主題は、〔「確立・統計」の領域における数学的な考え方や処理能力を身につけさせるための指導の一考察〕です。確率の実験を通した授業の分析に優れたものがあります。

 

一、研究の趣旨

 

三年生が学習する確率の領域は、私にとって指導のしにくい教材であり、単元でもある。しかし、この単元は、他の単元と比較して実生活に密着した教材であると思うし、また教材として大変魅力ある教材であると考える。内容の精選と指導法の工夫によって生徒が興味をもって学習することができると考えて、研究・実践に取り組むことにした。

生徒の確率に対する意識は、まことに観念的、抽象的で、漠然としている。また、いろいろな調査から確率指導上の問題を取り上げてみると、サイコロの目の出る確率はすぐに求められるが、その数の値が示している確率の意味や考えが、よく理解されていないことがわかった。つまり、確率の意味や考え方の理解が浅く、形式的であって、真の確率の概念が形成されていないと思われる。正しい確率の概念形成や確率の考え方を身につけさせるためには、単なる確率の一方的な説明ではなく、生徒の身近な事象に目をつけさせ、生徒自らの実験や観察によって事象を数理化することによって、確率の考えやその意味が理解されるものと思われる。

 

二、研究の仮説

 

「確率」の授業において、具体的な教材を使った実験と、それに伴う考察を適切に指導すれば、生徒は確率に対する意味や考え方をよく理解し、確かな確率の学力が身につくであろう。

 

三、研究方法・内容

 

(1) 生徒の実態把握

この単元の指導に入る前に事前テストを実施し、生徒の確率に対する考えや概念の理解の実態把握に努めた。

1) 確率は偶然的な要素から成る不確定事象であって、人間の意志とは無関係であることの理解が不十分である。

2) 統計的確率の概念形成がなされていない。

3) 「同様に確からしい」という用語の意味の理解が不確実である。したがって、数学的確率の考えを使って求めている生徒は少ない。

(2) 「確率」の指導内容を考えるために、主たる教材である教科書の分析をして自分なりに考察を加えた。

(3) 確率の意味や考え方、数学的な処理能力などについて、文献研究をし、その内容把握に努めた。

(4) 確率に関する生徒の実態や教科書の分析の結果と文献研究の結果から、この単元の基本的な指導を次のように考えた。

1) 確立の実験・観察の必要性の認識

2) 確率の実験・観察

3) データーの収集と分析

4)  統計的確率の意味の理解

5) 「同様に確からしい」の意味の理解

6) 数学的確率の定義

7) 確率の範囲についての理解

8) 余事象の求め方の理解

9) いろいろな確率の計算

 

四、実践

 

「確率」 (中学三年生)

上記の基本的な指導方針を実践に移すために、

(1) 単元「確率」の指導に入る前に指導計画を作成した。計画作成に本時のねらいをできるだけ行動目標の形で表わし評価しやすくするとともに、指導の重点を明確にし重点的に指導することができるようにした。

(2) 生徒の実態把握のために準備テストを実施した。

(3) 指導内容の精選、重点化を図るために、単元「確率」の指導のねらいに対する基本的事項と基礎的事項を明確にした。

(4) 仮説の有効性を確かめるために、指導案をもとに授業実践をした。指導案の作成にあたっては、毎時間の指導の構想及び、数学的な処理と表現を明確にすることに努めた。

(5) 生徒の変容を明らかにするために、レディネス・事前・事後テストや把持テストを実施し、また、生徒の授業に対する意識を調べるために、意識調査などを実施した。

(6) 生徒一人一人の授業に対する理解度や意識を把握するために、上位、

 

 

 


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