教育福島0103号(1985年(S60)08月)-043page

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中位、下位の生徒を抽出し、毎時間の授業に対する理解度の調査をするとともに、感想文などを書かせ、確率の授業に対する意識調査を実施した。

 

五、分析と考察

 

(1) 事前・事後テストの結果を分析してみると、生徒の身近にある具体的な教材で実験し、その結果を分析、考察させれば、確率の意味や考え方を理解させることは、ある程度有効であることがわかった。

(2) 一部の下位の生徒は、まだ日常経験からの確率の考え方から脱却できないでいることがわかった。

(3) 生徒の身近にある教材を用いて実験をさせ、それに伴う考察の仕方を適切に指導をすれば、確率の考え方や意味の理解が確実になり把持的効果も大きいことがわかった。

(4) 授業に対する意識調査を分析してみても、この単元の学習全体を通して意欲的に参加していたことがわかる。

特に、確率の実験をしてデータの収集、分析などをする授業への取り組みは、非常に意欲的であることがわかった。

(5) 抽出した生徒の授業に対する感想.文をみても、この単元全体に興味を示し、意欲的に取り組んでいたことが感じられた。

問題点としては、確率を調べるための単純な実験を長く続けると、生徒は実験に対する意欲をなくしてしまうことや、課題設定が適切でない場合には、「同様に確からしい」の意味をとらえることが、生徒にとってむずかしくなることがわかった。

 

六、成果と今後の課題

 

(1) 成果

1) 確率の導入には、実験を欠くことはできない。これは、確率の意味を深く理解させるためにも、また、生徒が形式的な理解に終らないようにするためにも、是非必要である。身近な材料を用いて実験をすることにより、生徒に確率に対して興味をもたせることができる。

2) 確率の実験をやってデータを収集・分析させることは、統計的確率の意味の理解を確実にし、次の「同様に確からしい」の意味の理解も容易にし、数学的確率の指導への移行もスムーズに行うことができる。

3) 確率の指導に実験を取り入れることは、生徒が今まで持っている確率に対するあやまった考えや確率の概念を、より正しい方向にもっていくことができる。例えば、十円玉二枚を投げて、(表・裏)出る確率は三分の一であると大部分の生徒は答えていたが、実験をやったり、樹形図を使って考えさせると、それがあやまりであることに、気付くようになった。

4) 実験なしで、又は、データを収集・分析しないで、理論的なことを教えて確率の求め方や意味を理解させることもできる。しかし、生徒の身近にある材料で実験を導入することによって確率の考えや求め方に意欲を示し、確かな理解を得させることができる。

(2) 今後の課題

1) 確率の実験をする前に予想をたてさせるとき十円玉やトランプのような日常生活経験から確率を知っているようなものでは違った予想も少なく、実験への動機づけとしては不適当である。もっと、意外性のある材料を用いて課題提示をすると効果があるように思われる。

2) 確率の実験において、どういう材料を使って実験をするかが問題である。例えば、十円玉のような材料は数多く集まるからよいと思うが、トランプのような材料になると、同質の材料を多く集めにくい。

3) 実験データーで、実験回数が少ないと、ある値に相対度数が収束しないために、生徒にとっては「本当かな」という疑問が残る。実験回数と確率の収束の関係が問題である。

 

資料1 授業に対する意識調査(集計・部分)

 

 

 

 

 

 


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