教育福島0104号(1985年(S60)09月)-023page

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随想ずいそう

 

車社会と歩行

 

車社会と歩行

 

佐川万二郎

 

、二十年先を考えると歩行筋の退化した人間になるのでないかと心配である。

 

今日、車の保有台数、免許証所持者数が驚異的に増加し、国民の三人に一人は車の免許を持っている現状であり、買い物、近くの使いにも車でと、十年、二十年先を考えると歩行筋の退化した人間になるのでないかと心配である。

わが園の登降園を見ると遠距離バス通を除き自家用車での登園児が三分の一をしめ、雨の朝ともなると便乗も含め三分の二と急増する。通勤途上の送りや安全上の配慮もあろうが車利用がこんなに多いものかと考えさせられる。

かつて小学校に勤務した時、回数と時間を競う校内縄とび大会で二キロほどの徒歩通の地区の児童が各学年とも入賞が多く、バス通の入賞児童の少なかったのに驚いたことがあった。

そういう私も退職により遠距離通勤でなくなり、車があるからと今までの惰性で六百メートルの距離を車で通勤し続けてしまったところ三、四年間で老化現象が進んだものか身体のあちこちに故障が表れ治療に苦労している。

今年の三月ごろ左膝が痛みだし整形外科医の診断を受け運動不足による関節炎とのことで治療を受け、痛みの軽くなったのを機に、毎朝歩行運動を始めた。朝は五時半起床、二キロ、三キロのコースを三十分、四十分と速歩運動で汗を流す。特に六月上旬には山友会の尾瀬探勝旅行を目標に、途中落後しては大変と雨の日にも歩いた。目標を持って行うことは張り合いもあり熱心に継続もしゃすい。そのかいもありまだ残雪もあり、湿原に清く咲くミズバショウの群落と尾瀬沼の自然の景観を十分探勝して所期の目標を達成し無事終わった。

今では足の痛みもほとんどなくなり今後も続けるがコースは五つほどきめ天候や時間により変えて歩いている。

歩くことにより自然にふれ、路傍の花、垣根越しの花の美しさや小鳥の鳴き声を聞き季節の移り変わりやいろいろな発見をすることは楽しく爽快なものである。

人間は足より老化するといわれ、歩く鍛練により、○足腰が丈夫になり、○心臓や肺の機能が高まり、○皮下脂肪がとれ、○心身の疲労がとれストレスを解消し爽快となり、老化を少しでも遅らすことができるのであるまいか。

 

今の子供たちが便利な車社会で生活し将来足腰の弱い人間に成長する心配があり、今大人は意図的に子供の足腰を鍛える手だてを構じてやらねばならない責任があるのではないだろうか。

わが園では足を丈夫にしょうと四月から週二回ではあるが、ラジオ体操、八十メートルのトラックを一周二周と駈け足をし、動物の行進、固定遊具での遊び等足腰の鍛えに努めている。

四、五歳の幼児でもあり無理なく週の回数や距離をのばしたりして、車社会のひずみをカバーして健康を増進させてやりたいと願っている。

「継続は力なり」何事においても特に進歩の見えにくい教育にあたっては毎日少しずつでも継続して指導をし力をつけてやりたいと考えている。

(棚倉町立第一幼稚園長)

 

せまってくる

 

せまってくる

表現のしかた

芳賀沼春子

 

見つめられた感じがしてドキッとした。これが「ひきつける」ということか…

 

今の季節はとてもいい。庭にも原っぱにも実にいろいろな花が咲いている。歩く足元をふと見ると白つめ草に赤つめ草、それにシオン、庭にはみやこ忘れが春からずっと咲き続けてくれているし、日陰には咲き遅れた十二ひとえがそれでも誇らしげに、そしてやっと色づいたあじさい……バスを待っていれば野あざみが濃い紫で、私を見て…。とばかりにまつ青な空をバックに迫ってくる。先日試験監督にある教室に入っていったら、マリアムと鳴子ランが生けてあったが、そのいずれもが天井を向いていてちっともおもしろくもない。生け花に使った残りを生徒がただ剣山にさしておいたのだろう。早速根元をおさえて角度を変えたとたん、花が教室の中全体を見はじめ、自分も見つめられた感じがしてドキッとした。これが「ひきつける」ということか…

 

 

 


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