教育福島0104号(1985年(S60)09月)-028page
心のハーモニー
清野茂徳
また暑い夏がやってきた。
私たち吹奏楽を指導する者にとっては、心の熱くなる季節でもある。
我が吹奏楽部も、夏休みに入り、本格的な練習がはじまった。
指揮棒を見つめる生徒たちの目は、本当に真剣で、一日汗びっしょりになって、練習に取り組んでいる。
もうすぐ吹奏楽コンクール。
今までの練習の成果を発表するときが近づいてきた。
生徒たちは、この十二分間の発表のために、日曜日も夏休みもなく、心を一つにしてがんばってきたのである。
ふり返ってみると、四月に本校に赴任し、吹奏楽部の顧問として四ヵ月、本当に無我夢中の日々の連続であった。
特に、吹奏楽のように、五十名という多くの人数で一つの曲を作りあげる活動においては、他の部活以上に、お互いの人間関係が大切になってくる。
一人でも、「和」を乱す生徒がいると、良い音楽はできない。
全員の気持ちが一つになり、それが音となってあらわれた時、すばらしい音楽ができるのである。
私は、いつも生徒たちに、「音楽は心のハーモニー(和)だ」と、教え続けてきた。
最近、ちょっとした事で、部の中に不協和音が起こった。
それは、練習に熱中しすぎたはずみに、三年生の一部の女子生徒と男子生徒が、お互いに「曲がうまくできないのは、お前たちがヘタだからだ」と言い争いをしたのである。このトラブルは、あっという間に大きくなり、しまいには「部をやめる」とまで言い出し、全員が困ってしまった。
その晩のことである。このことに心を痛めた三年生のS君が、夜遅く、居ても立ってもいられなくなり、家を飛び出していなくなってしまった。
幸いなことに、次の日、S君は家にもどってきた。
話をよく聞くと「何とか、みんなの心が一つになるように、真夜中、町のあちこちの神社にお願いをしに行き、そのうち疲れてしまい、社殿の回廊で眠ってしまった」ということであった。
私は、このS君の行動に、改めて、心のハーモニーの大事さを教えられた。
トラブルを起こした生徒たちにこの話をした。生徒たちは、黙って目に涙を浮かべ、この話を聞いていた。
このことがあってから、生徒たちはこれまで以上に、チームワークを大事にし、お互いに「心のハーモニー」を響かせる努力をするようになった。
また一つ、部の中にすばらしいハーモニーが響いた。
この四ヵ月の間に、生徒たちは、演奏技術はもちろんのこと、それ以上に人間的に大きく成長してくれた。
私は、これからも、微力ではあるが、吹奏楽部という活動を通して、生徒たちに「心のハーモニー」の大切さを教えていきたいと思っている。
(保原町立保原中学校教諭)
研修を通して
猪狩みか子
昨年度、教育センター主催の教育研究法講座を受講する機会に恵まれました。
日ごろ、担当教科の数学について、生徒の学力差の大きさ、学習内容の定着の低さなどに悩みながらも、指導法がとかくマンネリ化しつつあった私にとっては本当に有意義な経験でした。
当初は、何ヵ月間にもわたる長期の教育研究に対し、不安と少々の重荷を感じていましたが、難航しながらもなんとか研究を進めていくことができたのは、教育センターの先生方をはじめ、研修生の方々、勤務校の上司、同僚の先生方の適切なアドバイスと暖かい励ましのお陰と、心から感謝しています。
まず、研究主題は、何度も書き直しをくり返した結果、「学力の定着を図るための個に応じた学習プリントと自己評価票の活用」に決定しました。
毎時間、生徒に自己のつまづき、理解度、学習態度、質問を自己評価票に記入し、提出してもらうことにしました。その結果、どこにつまずきがあるのか分からなかった生徒も徐々に自分のつまずきに気付くようになり、補充問題にも真剣にとりくむようになった時は、大変うれしく思いました。学習態度についても、生徒は予想していたよりもまじめに自己評価し、質問も学級全体で平均二、三人であったが書くようになりました。
また、コース別の学習プリントにはどの生徒も興味と関心を示し、積極的に挑戦する姿が見られ、大変生き生きと取り組んでくれました。特に、下位群の生徒に、「分かった」という成就感を味わわせることができ、今までと