教育福島0104号(1985年(S60)09月)-043page

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動の中でうまくいったらほめ、成功感を与えるよう指導する。

−学校での指導

3)両親は力を合わせ、特に父親の関与が現在の状況を改善する力になることを自覚し、母(妻)をささえながら、男らしい気持ちを育てるように努力する。 −親の役割

4)教育センターでは本人に対し、作業をさせ注意集中時間の延長をはかるよう、行動療法的アプローチをする。更に協応運動の改善のために体育館で運動療法を実施する。

−教育センターの役割

5)相互連絡は教育センターの担当者が行うことにする。

以上の計画にもとづいて、約一年半.長期的な治療教育をつづけた結果、中三卒業時には、大きな集団での生活には問題をのこしていましたが、大部分‘の問題は改善され、無事就職(個人商店)し、楽しく働いています。

その間、前記の治療スタッフが数回集まり、状態の変化に合わせて次の計画を作り、実施しました。特に学校の取り組み、親の自覚など大きな成果をあげることができました。

以上A君の事例をまとめてまいりましたが、次にMBDの行動特徴と指導についてまとめてみます。

二、行動特徴

MBDの子供の行動が一般の子供と特に質的な違いがあるというわけではありませんが、強いていえば、その行動がいろいろと問題を引き起こすケースが多く、持続生、集合性、年齢とともにほぼ一定の経過をたどるところにあります。

 

1、運動性行動

(1) 多動一人歩きをはじめた途端、動きの激しさにおどろくことが多く児童期に入っても授業中席を立ったり、そわそわ歩きまわったりします。青年期に入るころから軽減したり消失したりすることが多く、反対に動かない子になることさえあります。

(2) 不器用(ぎこちなさ)−身体検査などの折一人でボタンをかけられなかったり、切り絵やはり絵などの時間にハサミを使えないで手でやぶつたり、行動全体がなんとなくぎこちないことが多いものです。

2、注意力散漫 一つのことを注意集中して続けることが困難で、次々と対象が変わります。

3、衝動抑制困難 自己抑制が困難で衝動的な行動が目立ちます。

4、自己顕示性の強さ 何でも目立ちたがりやで、対人関係では支配的態度をとりトラブルメーカーになりやすいようです。

5、学習の困難 知能が高い(団体式検査では適切に測定できないことが多い)にもかかわらず学業不振、特に国語、算数、器用さの要求される技術・家庭へ体育などがふるわないようです。この傾向は年齢がすすむにつれてはっきりします。

これらの特徴のほかに、運動系の協応が悪く、思わぬところでころんだりっまずいたり、歩行の様子がおかしかったりなど親や教師が何となく、どこか変だという印象をいだいていることも見のがせないところです。

また、こうした特徴が全部そろっていることは少なく、ある特徴が強く前面に出ているために他の特徴が見えにくくなったり、実際になかったりすることもめずらしくありませんσ

従って、このような子供がどの位の割合でいるのかは不明な点が多いのですが、欧米では、読み書きの習得困難な、いわゆる読字障害の子が十〜十五.パーセントといわれ、一般には五パーセント位の頻度とするのがよいといわれています。

三、指導(治療)

MBDの頻度からみて、教育に携わる教師なら誰でも出会うものと考えられます。ただそれがMBDであることを正しく理解できなかった可能性があります。

従って、このような子供を正しく理解するとともに、指導(治療教育)についてもある程度の知識と技術を身につけておく必要があると思います。

脳機能障害ということから不治の病として取り扱ったり、専門機関にまかせてしまおうとする傾向がありますが銘記しておきたいことは、発達途上にある子供の脳は、成人ほど機能の分化がすすんでいないことなどから、予想以上の可塑性と代償性にとんでいるということです。またどの子の脳も機能的には何らかの異常を出しやすい状況におかれているということです。

そのため、異常や障害も決して永久的なものでなく、適切な指導(治療教育)により速やかに改善される可能性をもっているといえます。

指導上まず直面するのが行動の問題一ですが、これは医師による薬物療法を試みることもよいといわれています。

従って、よく手慣れた医師の診断を受け、薬物療法を医師が、学校での教育を教師が、家庭生活の面を親が分担して指導するのがよいようです。

例えば、学校では行動問題から可能性をひきだせないことが多いので、薬物療法を受けさせながら、小人数の集団で、出来るだけ刺激をへらし、落ちついて学習できるようにしてやるとか、更にすすんでは、少しづつ刺激に慣らすようにしてやることです。情緒的に不安定で、衝動的で手のつけられないときはさりげなく外へ連れ出し落ちつかせるといったきめ細かな配慮としんぼう強さが必要です。

また次に起きる変化を先どりして指導するのが有効といわれ、そのために絶えざる観察が重要です。いずれにしてもMBDは、幼児・児童期の指導に期待するところが大きいものです。早期に発見し、教師のリーダーシップのもとで治療教育を受けさせたいものと思います。

 

 

 


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