教育福島0105号(1985年(S60)10月)-030page

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なるものでした。郷愁に似た気持ちを感じながら「新任校がここでよかった」

「がんばろう」と教師としてやっていく決意を新たにしました。

辞令交付、引越し、初出勤、始業式と緊張の忙がしい日々の後、私の初授業の日がやってきました。からだじゆうで緊張しているのがわかりました。教室の前で立ち止まり、ひと呼吸してから教室の中へ。六十二の瞳が一斉に私に注がれました。生徒たちは、私をじっと見ています。どんな言葉から授業が始まったか覚えていません。ただ、あっという間に終わってしまったような気がします。疲れたというのが実感でしたが、心の中ではある感動に浸っていました。

ところが、授業の回数が増えるに従って、あせりと不安を感じてきました。授業のリズムがつかめないのです。予定した内容をこなすことができない。生徒を思うように動かすことができない。生徒が期待どおりに反応しない。学習内容が難かしすぎるのだろうか。授業の進め方がまずいのだろうか。いろいろ工夫してもうまくゆきません。それどころか、授業中だんだん騒々しくなってくるようでした。そのうちに「なぜ、人の話をよく聞けないんだ」と生徒を責める気持ちも生まれてきました。そんな時に、ある人から次のような話を聞いたのです。「生徒は天使なんだ。その天使である生徒が嫌いになるようでは教師の資格はない」

自分の未熟さをたなにあげて、授業がうまくゆかないのを生徒のせいにしようとした自分がとても恥ずかしくなりました。「自分の未熟さを自覚したうえで生徒とともに成長してゆこう」そう思って教師をめざしたはずなのに……。いつのまにかその気持ちを忘れてしまっていたようです。

 

きょうも、天使たちに囲まれて英語の授業をしています。なかなか思うようにはゆきません。でも、自分の未熟さを自覚し、努力を惜しまないで天使たちとともに成長してゆけるような教師でありたいと思っています。

(いわき市立上遠野中学校教諭)

 

「乗船実習」を終えて

古市 栄

 

、本年度から三年生になると夏季休業中に乗船実習を実施することになった。

 

本校の無線通信科では、本年度から三年生になると夏季休業中に乗船実習を実施することになった。

今回は我がR三の三名の女子生徒を含めたクラスが乗船実習を実施することになり、二十六日八時三十分に泉駅に集合。その時は制服にバッグ持参で修学旅行にでも出発するかの様にも見えた。

 

午後二時三十分三崎港で福島丸に乗船、甲板に整列し船長、乗組員の紹介と船長から船内生活の順守事項、主任教官から日程、航程、航海当直の説明があり、割当てられた部屋に入り指定のジャージに着替えをしてくつろいだ。

女子の室は木の香のただよう二段ベットの四人用が二室あり、隣室は教官用、医務室、女子トイレ、洗面所と洗濯機二台があり、ドアを開くと五人位はいれる浴室、男子用のトイレとなっていた。

十六時三十分夕食、その後入浴そして船内で一泊。船はエンジンを止めたのでクーラーが効かなくなり、暑くて寝られないのか女子の部屋からはラジカセからの音楽が流れていた。

六時起床、下船して三崎港添いに一時間程朝の散歩。

十二時出港。直ちに航海当直に入った。クラスを四班に分け、更に一つの班が三つのグループに分かれている。女子生徒は三人で一グループとなった。最初は船橋当直でレーダー、進行方向の監視、航海計器の見方などの訓練を受けた。次は六時間後に無線室の当直で、ここでは専門分野の通信の当直であった。その次の六時間後には機関室の当直でありこの当直は航海中は常に実施された。

二十八日十時串本港に入港、十一時から十六時まで観光バスで名所めぐりをした。南の海は澄みきってとても美しかった。その夜は船内で一泊。二十九日十一時串本港出発。三十日十二時三崎港に入港。潜水夫が福島丸のスクリューに付着した貝殻を取り除く作業を見学、作業終了後十四時出港、前よりも三ノットも船速が増した。台風の影響で船の揺れば激しくなって来たので、航海当直は全員免除となった。その夜はベットの中で船の揺れるままに身をまかせるしがなかった。三十一日船の揺れも小さくなり朝日がさし海面はまぶしく輝いていたが、陸らしい影すらも見えない。皆甲板に出て目を大きくして遠くを見ている。小名浜港に近ずくにつれて海の色が褐色に変ってすごくよごれた色に見えたのか、皆が一様に「きたないなあ」と叫んだ。十二時阜頭に接岸。ここまで全員無事帰って来たという安心感で気持ちがスーとした。

 

初めての女子生徒の航海実習の体験記として「四泊五日の乗船実習はとても実のある良い体験となった」と結んである反省文からして、大きな成果を得られたのではないかと思っている。

(県立小名浜水産高等学校教諭)

 

 

 


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