教育福島0105号(1985年(S60)10月)-036page
明確な目的意識で
生涯学習を
−聴講生として学ぶ人々と制度の紹介−
定時制・通信制教育の充実を目指した「聴講生制度」の導入は、今年二年目に入り、各高等学校の積極的な取り組みにより一層の充実が図られております。
そこで本年度の重点施策でもある、「聴講生制度」の経緯と現在のようすをお知らせし、本制度の充実と発展を期していきたいと思います。
一、導入までの経緯
(一)県後期中等教育審議会の答申
昭和五十六年十月、県教育委員会から「定時制・通信制教育の充実について」の諮問を受けた県後期中等教育審議会(会長折笠与四郎)は、昭和五十七年十一月、六項目からなる答申をした。その中の一項目に、「聴講生制度の導入」が掲げられている。具体的には、 「職業上の必要や自己啓発の目的で、定時制または、通信制高等学校の教育課程の一部の教科・科目について聴講を希望する者に対しては、生涯教育の見地から、学歴や年齢に関係なく聴講を認めることが望ましい」と提言しています。
(二)各高校での研究と導入
この提言を受けて、昭和五十八年度には、県内十五の定時制・通信制課程設置校で、各学校の実態や地域の特徴等を踏まえ、聴講生の受け入れについて検討を重ねました。
これと平行して、県教育委員会では「県立高等学校学則」の一部改正を行い、昭和五十九年四月一日から施行することにしました。
聴講生制度実施要項によると、聴講生となるまでの手続きは左図のようになります。
二、現況
各高校では、制度上の研究とともに、中学校や地域の職場を訪問し、積極的にPR活動を展開しました。その結果、五十九年四月には五校五学科で、延二十九名の聴講生の誕生を見て、順調にスタートしました。
次に、各高校での状況を紹介します。
(一)須賀州第二高校
須賀川第二高校では、いち早くこの制度に取り組み、 「簿記会計1)」と「理科2)」を開講し成果をあげています。
本年度も「簿記」には、四十六歳、から二十三歳までの、大卒三名、高卒六名の九名の聴講生がおり、二高二年生十三名と机を並べて講義を受けています。昨年、簿記三級に六名の合格者を出した実績を上まわろうと真剣に聴講しています。
それぞれ職業につき、さらに学習するという明確な目的意識を持った聴講生の学習意欲は旺盛であり、本科生もその刺激を受け、充実した授業が展開されています。
その他、危険物取扱者の免許取得を目指した「理科2)」では、基礎電磁気学、化学等に五名の受講者が在籍しています。
(二)福島中央高校(定時制)
福島中央高校(定時制)では、本年四月より「工業基礎(マイコンと情報処理)」を二単位で開講しました。
大変な人気で、男性十三名、女性七名の計二十名が受講しています。BASICを中心にしたマイコン操作やワープロ操作が主な授業内容で、公務員、会社員をはじめ教員等の職業を持った成人が一人一台ずつ与えられたマイコンを使用し熱心に授業を受けています。
特に、受講者のうち、中学校の教員が十一名を数えていることは注目されることです。
(三)その他
以上の二校の他に、福島工業高校郡山北工高校の各定時制課程と、福島中央高校通信制課程においても地道な取り組みがなされています。
図 聴講生の手続き
表 聴講生の状況
昭和59年度
昭和60年度