教育福島0105号(1985年(S60)10月)-043page

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りと穴あけなど学校ではあまり取り扱っていない材料だけに苦労も多かったようである。旋削工程をやすりやボール盤加工に工夫することなどにより現場でもすぐに教材化できる、手ごたえのある作品である。

数値制御工作機械による加工では、まえがきにあるように、学校では手をふれることのない電算機システムと工作機械の連携を体験してもらった。百分の一ミリメートルの精度の加工によるロータリーエンジン模型の組み立てでは、ちょっとした組み立て上の狂いがローターの滑らかな回転を妨げ、各部品の加工が正確であるだけに、安易な組み立てを許さない現代技術のきびしさを体験することができた。ここで完成した模型はそのまま授業での標本として活用されるが、この製作活動そのものを授業の中にとり入れる試みについては、教育センター「所報」72号に、電算機システムをもたない学校現場でハウジング曲線を作図するための自作定規を用いる方法をくわしく紹介してあるので参照していただきたい。

「光弾性用構造模型の製作」では、透明エポキシ樹脂板で模型を作り、この試験片に荷重をかけたときにできるしま模様をOHPで投影し観察するものである。荷重と構造について生徒に考えさせる最良の教材である。しかしエポキシ樹脂板が非常に高価であることが難点である。投影することはできないが直接観察することができるアクリル板でも光弾性の実験は可能である。厚さ三ミリメートルのアクリル板が加工しやすく安価であるので、これを用いて生徒一人一人に、又はグループ学習として構造模型を作っての学習をすすめさせることができる。

「久しぶりに計器類をにらんで、電卓をたたいて、ふだんできない研修内容はさすがセンターという感じだ」「日ごろのエンジン指導では、原理や分解程度で、特性に関することはできなかった。この研修を糧として今後工夫していきたい」内燃機関生能総合試験機を用いてのエンジン性能試験での感想である。この他本年は文部省教科調査官、村田昭治先生の「技術・家庭科の指導と評価」の講演があり、研修者にとって大きな指標が示され、有意義であった。

(二)女子

一次研修は一月に行う予定であるが基礎的な製作技術を習得させるとともに、その学習過程において養われる思考力、判断力、計画性、創造性などを育てる観点から「縫いつれ」の実験をとりあげる。昨年度受講した先生から『種々の縫いつれの標本を掲示すると生徒はミシンで縫うたびに標本とくらべて「針目が小さすぎるので縫いつれがおきるのか、もう少し大きい針目にしよう」など主体的に学ぶ姿がみられました』とのたよりをいただいた。

二次は終了したばかりであるが「人体と被服構成」では、体型把握の方法としてマルチン式人体計測器を使って計測の基本を実習した。採寸は重要な指導事項であるにもかかわらず適切な指導がなされない傾向がみられるので正しい計測を知り指導に役立つ内容であった。

「牛ひき肉の食塩添加と混ねつによる影響」では、ひき肉に食塩を加えてこねると調味が均一になり、肉にねばりがでてまとまりがよいことを、実験を通して明らかにした。この実験も簡単にできるので「調理実験」として指導計画に位置づければ、効果的な指導が展開できる。また「洗濯による繊維製品の損傷」では、毛とアクリルのジャージを使い望ましい洗濯の方法を理解した。実験した試験片を台紙にはり収縮率をみることにより被服整理の指導に役立てることができる。

 

(三)高等学校家庭講座

 

この講座は「被服」と「食物」が隔年ごとに行われる。「加工食品の取り入れ方と調理指導」は寺元芳子女子栄養大学教授の指導のもとで行った。乳化剤を使用したスポンジケーキの実験は手づくりの良さを再認識し、加工食品の利用の視点を見直す指導に役立った。「食物領域におけるコンピュータの利用」は情報処理教育施設を活用しての栄養所要量、栄養指数の計算のしくみについて学習した。今後更に食物指導におけるコンピュータの利用を実習を通して体得させていきたい。

 

おわりに

 

休憩時間をとることも惜しんで製作や実験にとりくんでいる先生がたの熱心な研修ぶり、またそれに応える講師の先生方のご指導、学校現場の熱気の再現を思わせる研修風景が続いています。この成果が子供たちに還元され、技術・家庭教育の充実につながっていくことを期待しています。

 

教育センター

 

縫いつれ実験の資料

縫いつれ実験の資料

 

 

 


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