教育福島0106号(1985年(S60)11月)-024page

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わかりやすい教育法令

−判例紹介−

学校施設の使用許可

 

一 はじめに

 

一 はじめに

今回は、県立学校施設の使用許可申請に対し校長が不許可とした事例に関し、福岡高等裁判所昭和六〇年三月二九日判決(確定)を紹介します。

二 事実の概要

鹿児島県高教組は、昭和五四年一一月に、名瀬市など各地において音楽舞踊団カチューシャによる「ああ野麦峠」の公演を計画し、県立高校の体育館六か所と名瀬市中央公民館の使用許可を申請しました。これに対し各施設の管理者である各校長並びに公民館長は、この公演の資金が組合の主任手当拠出運動から支出されており、組合の闘争行動助長につながるとして、すべて不許可としました。

そこで組合側は、この不許可処分は違法であるとして、これによって受けた損害約一二〇万を求めて本訴を提起しました。

三 判決の要旨

本判決で示されたいくつかの論点のうち、その主なものをみていきます。

1 学校施設の目的外使用の法律関係について

(1) 地自法二四四条は、地方公共団体が住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するために設置した公の施設について、住民がその目的にかなって利用することを正当な理由がなく拒んではならないとしていますが、公の施設をその目的外に使用する場合は、施設管理者の使用許可が必要であり、それは公の施設の用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができるものであるという原則を示しました(地自法二三八条の四第四項)。

(2) 右のような一般的原則は、学校施設の目的外使用について定めている学教法八五条の「学校教育上支障のない限り……学校の施設を社会教育その他公共のために利用させることができる」場合にも適用され、また学校施設を利用させるかどうかは学校管理者の裁量的なものである、としています。

2 「学校教育上の支障」について

(1) 学校施設の目的外使用許可の前提条件とされている学教法八五条、社教法四四条一項、スポ振法一三条一項ないし県教委の管理規則にいう「学校教育上の支障」とは、単に施設が狭いなどの物理的支障に限らず、教育上の配慮から広く児童生徒に対し精神的悪影響を与え当該学校の教育方針にもとるような場合もこれにあたる、としています。

そして、単に現在の具体的な支障の存否だけでなく将来における教育上の支障が生ずるおそれが明白な場合を含むものと解するのが相当である、との判断を示しました。

(2) 本件公演実施と学校教育上の支障との関係については、次のように認定しました。

本件公演の会場として学校施設の使用を許可することは、校長と控訴人組合との間のみなちず、教職員間の対立、緊張を一層高め、紛争が激化増大して学校運営に支障を来し、ひいては児童生徒に対する学校教育上に支障を与える蓋然性が高かったものと推認するのが相当である、と認めた上で、右の事実によれば、各校長が行った不許可処分は各法令に反するものではない、と結論づけました。

3 裁量権の濫用について

控訴人組合は、各校長が行った不許可処分が裁量権の濫用にあたると主張しましたが、本件公演は学校教育上支障がある場合ないしそのおそれがある場合にあたり、かつ校長がそのように判断して不許可処分としたものであって、合理的な裁量の判断の枠内にあり、濫用にあたるものとは認められない、として主張をしりぞけました。

四 おわりに

本判決で注目されるのは、いわゆる「学校教育上の支障」とは、物理的支障に限らず教育的観点から精神的支障を与える場合も含まれるとの解釈を示し、校長の裁量判断権を大きく認めたことです。

なお、市町村公立学校の場合は、学校施設等の使用について、校長を経由して市町村教委が許可することとなっています(本県管理規則準則三五条)。

 

質疑応答

問 公民館とか市民グランドの利用と学校施設の利用とでは異なる点があるのでしょうか。

答 学校施設は、学校教育の用に供することを本来の目的とする公の施設であり、公民館等のように広く一般市民の共同利用に供することを目的とする施設とは異なると解されています。前記判例でも、公演会場として公民館を使用することはその設置目的にも合し、不許可は違法である、との一審判決(確定)が出されています。

 

 

 


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