教育福島0106号(1985年(S60)11月)-032page

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閑に耐え、激せず、躁がず、競わず、随わず、以って大事をなすべし (王陽明)

 

仕事を予測し、打つ手を考えて、静かに待つ。こんな気持になってからは仕事が楽しくなった。生徒を叱るときも距離をおくことができるようになった。先人の足跡をさぐり、先人に学ぶ。私はこの地に来て大きな収穫を得た。

(県立湖南高等学校教諭)

 

A男の贈り物

大原正義

 

るへき地の中学校に赴任した。教職経験四年目、結婚二か月目のことである。

 

五十四年の春、私は相馬郡のあるへき地の中学校に赴任した。教職経験四年目、結婚二か月目のことである。

新任地での生活に一まつの不安を抱きながらも、この地の人々に一日も早くとけこむため、地区の行事などにもできるだけ参加することにした。

生徒数百四十余名の小規模校で、生徒数二十九名の一年生の学級を担任した。互いに新鮮な気持ちで学習に運動に励んでいたある日、A男の母の突然の死を知らされた。母との永遠の別れにがっくりと肩を落した彼の耳には、私の励ます言葉さえ聞えない様子だった。

それ以後、A男の生活態度は以前にも増して感情的になり、目付きも変わっていった。複雑な家庭環境の中で育った彼にとって優しかった母の死はあまりにもショックが大きかったことが察せられた。

「これからはお父さんと一緒にがんばるんだぞ」と励し、また、一方では部活動で思いきり汗を流すことを勧めた。しかし、学級の中には感情的になりやすいA男を良く思わない生徒もいた。そう思われるとより目立つ格好をする。こんなA男の本当の心中を当時、私はどれほど正しく理解していただろうか。

どこで聞いたのか一人の生徒から、A男が新潟に引き取られることになったことを知らされた。本人に聞いてみるとやはり事実であった。しかし、A男はこの地に残りたいと強く願っていた。「私たちでA男を守る会を作るんだ」と言う生徒まで出てきた。学級の生徒も、ようやくA男の態度は、寂しさもあってのことだということに気づき、問題の解き方を教えたり、部活動を一緒にやることで仲間意識を高め、少しでもA男の態度が良くなれば新潟に行かなくなるだろうと考えるようになっていった。A男の気持ちやA男から聞く他の生徒の行動が分かってか、やがて父親の考えも固まり親子三人で暮らすことになった。

自分には仲間がいることを知ったA男は除々に生活態度も落ち着きをとりもどしてきた。

A男も三年生となり進路を決める時期になったころ、私にも一つの喜びがあった。娘の誕生である。未熟児に近い状態だったが、五体満足であったことに感謝した。そんなある朝、教室へ行くとA男と学級委員が「先生、おめでとう。これ」と言って大きな紙包を誇らしげに差し出した。受け取って中を開いて見ると、なんとそれはおむつであった。

A男が、学級の全員に呼びかけ、A男を含め全員が一枚一枚を手で縫ったものだと分かった時には、表現のしようのない嬉しさがこみあげてきた。

「先生。A男、本当はとってもやさしいんだよ。でも照れ屋だから言葉に出せないだけなの」と言った女子生徒の言葉を今も忘れない。

太陽の下で、くるくる風に舞っているおむつを見る度にA男の顔がなつかしく思い出される。

 

そのA男も、今年、この秋に勤め先で知り合った娘さんと結婚することになったという。

(鹿島町立鹿島中学校教諭)

 

正しいシートベルトの着用で安全運転

正しい締め方

 

1) 腰ベルトは腹にかからないようにする

2) 肩ベルトは肩から外れず、また首にあたらず、肩の中央付近にくるように締める

3) ベルトはねじれないように

4) バックルばカチッ上音をさせて

 

正しい着用のポイント

 

 

 

 


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