教育福島0106号(1985年(S60)11月)-033page

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特集2

新しい学校施設づくりをめざして

 

明るく、楽しく、すこやかに

学校建築の動向とその利用

 

1) 学校施設の建築動向

 

一 新しい発想へ

 

戦後の県内の公立小中学校施設の整備の状況を振り返ってみると、昭和二十年代の新制中学校の発足に伴う中学校の整備、昭和三十〜四十年代の高度経済成長下の二世代にわたるベビーブームと、都市への人口集中に対応するための施設整備、昭和五十年代においては、老朽化した建物の大量な改築整備と、一貫して、重点的に量的な整備が進められてきたところである。

しかしながら、児童生徒数の増加は、小学校が昭和五十八年度、中学校が昭和六十二年度にそれぞれピークを迎え、その後長期にわたり減少傾向を示すものと予測され、また経済の安定成長下にあって急激な人口移動は予想できない状況から、もはや量的整備の時代は去りつつあるものと考えられる。

 

一方学校施設に対する質的整備の充実が求められているが、その背景としては、次の点が挙げられる。

(一) 児童生徒の心身の発達段階や、特性等を考慮しつつ、学校や教師の創意工夫を加えた学習指導が活発に展開されるようにするため、小中学校の学習指導要領が、昭和五十二年度に改訂され、小学校は昭和五十五年度から、中学校は昭和五十六年度から実施されていること。

(二) 昭和五十八年十一月には中央教育審議会教育内容等小委員会から、児童生徒の学習意欲を高め、教育内容を確実に身につけさせるためには、これまでの一斉指導のみでなく、個個の児童生徒の特性を配慮した多様な学習指導方法を弾力的に進めていく必要がある旨、提言されていること。

(三) 学校施設そのものが教育活動の一つの要素となるものであるとの認識が強まってきていること。

(四) 学校と地域社会との連携に関して見直しされていること。

(五) 学校施設面の問題として、過去の量的な整備の時代に建築された鉄筋、鉄骨等の木造以外の建物のうち経年変化による老朽化が進んでいるものが増加していること。

 

以上のような時代の要請に応えるためには、従来からの一般的な学校−四間×五間の教室が並んだ片廊下一文字型校舎−のように、一歩教室を出れば廊下や階段しかないような学校では新しい学習形態への柔軟な対応に支障をきたすものと考えられてきている。

また、学校は児童生徒が一日の大半の時間を過す生活の場でもあり、このためには「ゆとり」と「うるおい」のあるスペースも必要であるものと考えられる。

文部省では、昭和五十九年三月「これからの学校施設づくり−六つの留意点−」をまとめ、今後の学校施設づくりの指針としている。(三十四ページ参照)

 

二 新しい学校施設づくりの動き

 

県内における公立小中学校の新しい学校づくりをめざした動きは、表1〜表3のとおりであり、逐次整備が促進されてきている。

(表1 多目的スペース設置状況 表2 小中クラブハウス設置状況 表3 屋外教育環境施設設置状況)

 

三 今後の課題

 

学校施設づくりに対する考え方に大きな変革を求められていることは前述のとおりであるが、さらに今後整備される学校は、二十一世紀にも使われる建物であるとともに、次の世代を担う子供を育てる建物である。

今後の社会経済情勢の変化に対応した学習形態を弾力的に取り入れられるような長期的視野に立った施設整備計画が必要であると考えられる。

なお、既に改築等で整備を完了した学校にあっても、建物の老朽化に伴う改修時期に児童生徒数の減少による空教室対策として、積極的に多目的スペース等への転用を図るなど新しい学習形態に対応できるよう整備することも必要であると考えられる。

 

 

 


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