教育福島0106号(1985年(S60)11月)-037page
けて施設建設が予定されている岩江小、中郷小、中郷中、中妻中、沢石中の各学校から学校建築あるいは学校環境に対する要望、考え方が十月末に提出された。日頃それぞれ胸中に抱いていた考え方が示されている。要約すれば、
ア、自然環境を大事にすると同時に、十分生かす
イ、学習、情操、運動、作業などに対しゆとりある屋内外スペースを計画する。
ウ、地域との関わりを大切にする。
エ、教室の機能の充実
オ、子どもの生活施設の用意
カ、中学校では相談用教室の充実
キ、木という素材を生かすこと
ク、施設・設備全般に対する細かい
留意事項の指摘
これらの多くは、各学校さらには一般の学校の計画に直接反映させることが必要と考えられる。またあるものについては、予算等の現実的条件で直接実現することは困難であったり、規模や建設技術を併せて考えると、よりよい解決の仕方があると思われるものもあった。これらについては、施設の形で記述された項目が学習面や運営面で機能的には何を要求しているものであるかを汲みとり、それに対応する施設が巾広い建築計画の方法や考え方の中から改めて提案されることが適当であると考えられる。
この謂わば施設の要望→機能の抽出→施設の提案、という変換、「翻訳」のプロセスがこれからの学校施設計画には重要であり、さらにその翻訳が適当かどうかが計画・設計側・学校・地域・PTA、行政側の間で最後まで検討し続けられる体制が必要とされる。三春町の学校計画の最も重要な要素の一つがここにある。(各学校から出された要望、考え方の詳細については、「付記報告書」を参照されたい。)
(二) 基本方針
前章の基本的考え方および学校から出された要望をもとに、三春町の学校建築を計画していく上での基本方針を以下のように設定した。
1、配置計画
ア、周辺環境との関わりに留意をする。自然環境を生かし、周囲の景観と調和し、さらには地域のランドマークとして積極的に寄与できる計画を行う。
イ、敷地の有効利用を図り、緑化、環境美化、働く体験学習などを想定した屋外環境を整える。
ウ、建物の内と外の連続生を大切にし、テラスやバルコニーなどの半戸外空間を充実させる。
2、クラスルームまわりの学習スペースの計画(表1)
ア、大・中・小集団から個にいたるまでのティーム・ティーチングを始めとした弾力的な学習集団編成に対応できる計画を行う。
イ、学級指導→学年指導→低・中・高学年単位の指導→全校の交流という、学校経営に対応できる連続的、段階的な空間構成に留意する。
中学校の場合は、教科学習指導→学年生活指導→全校の交流という別の組み立てについても検討を行う。
ウ、学習材、教具の用意された学習環境づくりを意図する。
エ、クラスの変化(将来の増築、あるいは空き教室発生時の有効利用)に対応できる計画を行う。
オ、上記に対して、多目的スペース(オープン・スペース)を設ける。なお、多目的スペースの計画にあたっては以下の点に留意する。
1) オープン・スペースが対応する単位をはっきりすること
2) クラスルームに近接していること。
大教室が棟の外れにあるような形では日常的な活用は困難、一文字形の校舎形態からの脱皮が必要である。
3) 広さは少なくともクラスルームより上位の段階性をもたせる。
学年が集まれる。教材、机類、OHP・VTR等がコーナーとして用意しておける広さ、子どもが自由に場所を移れ、場面の展開がスムーズに行える。
4) 学習の場としての環境・設備・ふん囲気を備える。
5) 校具(家具)の整備
広いテーブル、グループ机、教材、図書用の低い移動棚、間仕切、掲示板。
6) 子どもの休息の場ともなるよう配慮する。
このほか、
3、特別教室の構成
4、図書・メディアの配置
5、教員室の組み立て
6、地域との関わり
7、旧校舎との関連
8、素材感
9、家具の整備
10、計画プロセス
についてそれぞれ基本方針を固めた。特に、計画プロセスについては
ア、最終決定は教育委員会がするも
多目的ホール