教育福島0106号(1985年(S60)11月)-046page

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教育センターから

 

「教育研究法講座」

−教育研究の在り方を求めて−

 

一、はじめに

 

全国的に、学校教育に対する期待が高まっているなかで、各学校においては、「心豊かな、たくましい人間の育成」を目指して教育活動に取り組んでいるところである。

学校における教育活動の一層の充実を期待するには、現状の課題解決を目指し、進展する時代の変化に対応する着実な実践こそが大きく求められるところである。

そのためには、「指導と評価の一体性」の評価観が、教育の成果を高めるための手だてとして具体化され、定着しつつある現状に加えて、更に、「教育活動と教育研究の一体生」を、教師一人一人の教育理念として認識を深めることが必要ではないだろうか。

教育研究によって得られるものは、それぞれの教師の動機や目的によって異なろうが、基本的には、研究のねらいが達成され、それぞれの課題が解明されるところにあるといえよう。教師自身が、自己にきびしく、常に問題意識をもって研究的に実践に取り組み、その累積による自己向上と自信をもった指導によってこそ、児童生徒の望ましい変容がもたらされるのである。

ここでは、「教育研究法講座」について紹介しながら、主題研究の進め方について述べ、先生方が、教育研究に取り組む際の一助としたい。

 

二、教育研究法講座

 

この講座は、その前身が昭和三十九年に福島県教育調査研究所(所長・長谷川寿郎)が、小・中学校教員を対象に学校や地域の教育活動を推進していくリーダーを養成するために開設した「地域研修指導者養成講座」である。

その後、昭和五十年に、同講座の研修日程、研修対象領域に検討を加え、「教育研究法講座」とその名称を変更したものである。更に、昭和五十四年には、「学校経営(B)講座」とともに、高等学校教員を講座受講対象に組み入れ、講座人員の拡大、内容の充実を図り今日に至っている。

この講座における教育研究は、学校教育における指導法改善について実証的に研究を行うものである。その手順は、次のようである。

(1) 当面、解決がせまられている指導上の問題から研究主題を設定し

(2) これを解決するための何らかの方策を仮説として設定し

(3) 仮説を適用した検証授業(指導)を実施して仮説を検討するためのデータ(資料)を収集し

(4) データ(資料)の処理・分析を基に考察を行い

(5) 結論を導き出し、この仮説の有効性を判断する

以上のような研究の手順に基づいて研修講座は、表1のように年間十二日間の研修日を前期、中期、後期(各期三泊四日)の三期に分けて行う研修と勤務校における研究・実践により進められる。

なお、今年度は、次の方々を講師として依頼している。

●郡山女子短期大学短期大学部教授

長谷川寿郎

●岩手大学教授

駒林 邦男

 

三 講座内容・研究の手順

 

概要は、表1の通りである。前期及び中期については、今年度の実態から、後期の研究報告会については、前年度までの実態を基に述べる。

 

(一) 前期(研究主題、仮説の設定)

前期は、受講者が事前研究により設定した研究主題、仮説を「検討」、「吟味」し、研究構想を確立することが中心となる。

受講者は、「教育研究の基本は、教師の教育充実への熱意をもって、教育状況を批判的に把握し、論理的に取り組むことにある」と説く長谷川教授の「教育研究法概論」を学び、教育研究についての理解を深める。次に、「教育研究の進め方」により研究手順を理解する。更に、研究相談、そして「データの処理」により、検証用具の作成・選択、検証手続きについて研修者自身のものにしていく。「データの処理」を終えたころから受講者も「主題、仮説」を吟味する視点を把握しはじめ、相談も熱気をおびてくる

研究相談は、教科・領域等別に一〜二名の所員が担当する。この期間における相談は、次のような対応・内容が主である。

● 受講者の主体生を最大限に尊重し、八か月に及ぶ研究・実践に意欲を持ち続けることができるよう配慮する。

● 児童生徒の実態の共有につとめ、必要に応じ問題意識のほり起こしの視点等を受講者とともに探求する。

● 受講者の経験や実践の実例を尊重し、日常の教育活動と研究が遊離したものでないことを認識しながら進める。

● 研究主題は、解決可能な範囲に限定すること…児童生徒の実態から。

 

 

 


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