教育福島0107号(1985年(S60)12月)-018page
特集2
学習指導の展開
高等学校
国語
古今和歌集の指導
県立郡山女子高等学校
教諭 本多 節子
二年生を対象として、「古今和歌集」をとりあげ、生徒たちの学習活動についてまとめた実践報告である。
「古今和歌集」の学習を契機として、「伊勢物語」の世界へと誘われた生徒がおり、また、他の多くの生徒たちが、中古の世に生きた人々が全身全霊をもっていかに自然を愛したかを知り得たのは貴重であった。さらに、偽りのない愛の姿を垣間見ることができたのも大きな収穫であった。
(1)指導目標
(ア)音読の楽しさを知る。
詞書と歌のリズムに留意し、情景、場面などを想像しながら音読する。
(イ)文法指導を適切に行う。
文法指導は歌を読む楽しさをそこなわないように配慮して行う。
(ウ)表現活動を重視する。
情景や心情を読みとるために、生徒たちに「書く」ことを意識させ、豊かな表現力を培うことをねらいとする。
また、現代的視点からの考察を試み、「もしも、私がその立場であったなら」という状況設定に基づいて、生徒の心情が吐露されることを企図する。
(2)指導計画(配当時間5時間)
・一時限.
〈目標〉1)「古今和歌集」の成立を考える。2)音読ができる。
〈学習活動〉1)「古今和歌集」成立の背景、時代区分、部立について発表する。2)仮名序の文学史上の価値を理解する。3)仮名序を音読する。
〈留意事項〉1)仮名序と真名序の意義を知る。2)教師が範読する。
・二時限
〈目標〉1)著名な歌人とその作品を知る。2)四季の歌から恋の歌へと、部立の流れを把握する。
〈学習活動〉1)春の歌から、その美しい季節の展開を知る。2)夏の歌から懐日の情と季節の展開を知る。3)紀貫之の歌から、宿のあるじが男か女か推理する。4)読人しらず〔六二〕と業平〔六三〕の歌を朗読する。
〈留意事項〉1)視覚と嗅覚による表現の巧みさを知る。2)「伊勢物語17段、60段」を味読する。
・三時限
〈目標〉1)秋の歌と冬の歌を学習する。2)修辞について知る。3)歌の情景を想像する。
〈学習活動〉1)素性法師がどこにたたずんでいるのかを想像する。2)縁語について調べる。3)色彩的美しさ、屏風の絵と競う歌の美しさを考究する。4)季節のすがたを考える。5)「花」とはなんの花なのかを知る。
〈留意事項〉1)「らむ」の効果を知る。2)「深き」と「水門」に注意する。3)「紅」はどのような色彩であるかを、また、波間に漂う「もみぢ葉」の美しさを想像させる。4)詞書に冬の歌で「梅の花」とある場合の例を示す。また、ない場合の例を示す。匂う美しさと姿の美しさで花の種類を想像させる。
・四時限
〈目標〉1)恋の歌を学習する。2)詞書の物語性を知る。
〈学習活動〉1)小野小町の心情をさぐる。2)二条后の宮と在原業平との関係を知る。3)詞書の長さに注意し、〔七四七〕の歌の情景を想像する。
〈留意事項〉1)二条后の宮と在原業平の関係について、「伊勢物語3段、5段」を踏まえる。2)「伊勢物語4段」を範読する。
・五時限
〈目標〉1)考え、感じたことを的確に表現する。
〈学習活動〉1)グループごとに、印象に残ったことがらを発表する。2)感動的な表現の箇所を析出し、その理由もあわせて発表する。3)テーマにそって、二百字から四百字程度の感想文を書く。
テーマは次からひとつを選択する。
(ア)四季の歌から恋の歌へという部立の構成について(イ)詞書について(ウ)「古今和歌集」と「伊勢物語」について(オ)印象に残った作者について
〈留意事項〉1)四季のとらえかた、