教育福島0107号(1985年(S60)12月)-033page

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けるコンピュータ利用の開発研究」プランに基づき、実験学校十三校を指定したことからも伺える。

(一)応用プログラムの開発と意義

本校では、コンピュータの応用利用としては、特に「総合実践」の授業に取り入れ活用している。

対象は、二年生の全クラスが履修している外部との取引による模擬実践と、三年生の事務科及び情報処理科が履修している事務実践である。

利用形態別に内容を列挙すると次のようになる。

ア、業務処理(データ処理)

紙面の都合上、各種業務処理プログラムの内容について細かく説明することはできないが、実践の中にコンピュータ(特にパソコン)を導入したのは五年前からである。その目的は、単に業務処理を簡素化するためではなく、現在実務界で急速に浸透している「OA化」ということが実際どのようなことなのかを理解させることであった。

したがって、実践の授業ではそれを理解させるために手作業でまず処理させた後に、コンピュータによる処理を行わせるようにしている。そのことによって両者の比較からOA機器の特徴と便利さを一層深く理解することができるのである。

イ、ビジネスゲーム

ビジネス・ゲームとは、数人のグループで架空の会社を作り、コンピュータを利用して会社の経営を体験しようとするものである。このゲームは、商業関係科目の動的な復習と意思決定能力を育成することにあり、CAIの一手法であるといえる。

 

(二)競争原理を導入した総合実践のモデル化を目指して

総合実践の授業は、各学校の実態に即して、創意と工夫を働かせ、各々独自の特色ある内容を設定することが適当であるとされているが、この趣旨を生かすための内容の一つである競争原理が導入されたものは多くないように見受けられる。総合実践の授業は、社会の仕組みをいかにモデル化するかということが大切ではないかと思う。

残念ながら、本校の「総合実践」もこの「競争原理」が取り入れられていない。しかし、生徒は年度末に行うビジネス・ゲームで市場の競争原理を体験することで、所期の目的を達成している。

そこで、結論的に言うと、この二つを結合し、ビジネス・ゲーム(意思決定の要素を含む競争の原理を導入した)を基本にした「総合実践」が構築できないものかということが課題となった。

もちろん、そのためには種々の解決すべき問題点が数多くあるが、一つ一つ新たなモデル化に向けて構想を練り上げているところである。

 

六、情報化社会における情報処理教育の在り方

 

コンピュータの発達は秒速分歩の観がある。その中でも特にパソコン及び端末機の発達はコンピュータを特別の人だけのものから解放し、非常に身近なものにしてしまった。それに応じて、教育効果の向上を目指して、その応用利用面における研究分野はますます広がってきたと思われる。

先にあげたビジネス・ゲームに見られるようなCAIによる教育方法もその一例であるが、このCAI手法が、これからの情報処理教育の重要な一分野になるのではないかと思われる。

CAIのねらいは、伝統的な授業方法のもつ良さを生かし、不足しているところをコンピュータによって補い、学習者一人一人の個別化を図ることを目的としているのである。

ここでは、授業形態を(一)一斉授業、(二)図形使用による授業、(三)CAIによる学習のそれぞれの授業効果を図4により示した。この図は、同じ学校の能力的にはほぼ同じ生徒を対象に、三形態で実施した後に同一問題によって試験を行った結果を示したものである。

これを見ると、一斉授業の場合は最高点が96点、最低点が20点と大きな開きが見られた。これが、図形を使用すると両者の開きは狭まり、さらにCAI学習によると、最高点と最低点の開きはほとんどなくなり、高い得点レベルの域に集中しているのがわかる。ここにCAIによる学習の大きな効果を見ることができたのである。よって、この分野は、多様化する生徒の効果的指導法の一つとして、これからの情報処理教育の一分野として研究されていく価値のあるものと思われる。

結論的には、情報化社会における情報処理教育は、「コンピュータ」を通して学ぶことから、さらにコンピュータと共に学ぶということが重要な課題であると思うのである。

 

表4

表4

 

表4

 

 

 


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