教育福島0107号(1985年(S60)12月)-043page

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くかかわっております。したがいまして、この度の臨時教育審議会の活動には、深い関心を寄せているものであります。−中略− 外国語教育、特に英語教育に関して、私たちは中学校及び高等学校の学習指導要領に示された外国語教育の目標(すなわち、外国語を理解し、外国語で表現する基礎的な能力を養うとともに、言語に対する関心を深め、外国の人々の生活や、ものの見方等について基礎的な理解を得させる)に全面的に賛成するものであります。私たちの個人的な経験からではありますが、外国語を学習するということは、国際間の共通の文化的感受性を養う第一歩であると思います。その様な感受性こそ、現在の経済上、政治上、科学上の国際情勢の中では、いくら強調されても強調され過ぎるということはないと思います。二十一世紀を間近かにひかえた今日、各国の青少年が自分自身を自国の市民としてだけでなく、世界の市民としての自覚をもつことは、極めて重要であると考えるものであります。−中略− しかし、現実的には矛盾があるように思われます。すなわち、学習指導要領の目標では、英語で理解し表現する伝達能力が強調され、他方、入学試験では文法事項の記憶力が、重視されております。私たちは、日本の政府の最終目標は、学習指導要領の外国語科の目標実現にあると思いますので、この目標に合わせるためには、入学試験制度が変革される必要があると思います。私たちは、この変革のお役に立つことを願い、いくつかの提言をしたいと思います。 一、入学試験 最も重要な事ですが、もし英語で理解し表現する能力の育成が、学校で重視されなければならないとするならば、入学試験においても重視されなければなりません。東京大学が、入学試験の一環としてヒヤリングテストを実施するとうかがっております。これは誠に積極的な姿勢であり、すべての大学が、この例にならうよう望むものであります。もしも、生徒たちが英語で理解し表現するという基本的な伝達能力を身につけて公立学校を卒業することが、本当に望ましいことだとするならば、これらの能力を身につけさせるための最も簡単で効果的な方法は、これらを入学試験に位置づけることだと思います。−中略− 二、小規模学級 現在、英語で理解し表現する能力を養う上で最も大きい障害の一つは、一クラスの平均的な規模にあります。一クラス三十五名から四十五名の規模では、本当に英語で理解し表現するという伝達能力(特に口頭能力)を養う上で要求される生徒一人一人の十分な集中力を期待することは不可能に近いことです。私たちは、昭和六十六年度には、一クラスの生徒数の上限が、四十五名から四十名に引き下げられると聞きおよんでおります。しかしながら、この引き下げにもかかわらず、その程度の規模のクラスでは、生徒に英語で理解し表現する能力を効果的に養うことは困難であろうと危ぐするものであります。 三、能力別学級編成または、学習習熟度別学級編成 私は、外国語で理解し表現する能力を効果的に養うためには、ある種の能力別学級編成制度が外国語学習で取り入れられるべきであると思います。外国語学習では、生徒たちは、それぞれの能力に応じたクラスに編入されるべきです。このようにすると、生徒たちは、脱落したり、極端に苦労したりすることもなくなるとともに、退屈したり、進度の遅い生徒に対していらいらすることもなくなると思います。もし、外国語学習が高等学校段階で、選択教科として課せられるならば、一種の自然な能力別学級編成が生じると思います。もっともすぐれた才能のある生徒たち(上位の十パーセント位)は、その生来の素質を伸ばすために、同じクラスに編入されるべきです。中学校段階では、一年間外国語学習をした後で、生徒たちは、それぞれの学習成績に応じたクラスに編入されるべきです。すなわち、理想的には、上位の十パーセントの生徒のクラス、下位の十パーセントの生徒のクラス、そして中間の八十パーセントの生徒のクラスの三クラス編成が望ましいと思います。このような区分けの方法は、正常分布曲線によるものであります。このような方法によって、英語の先生は、それぞれのクラスの進度を決め、生徒一人一人の必要に応じて適正な指導を行うことが可能になります。もしも、学習期間中において、生徒の学力に変容が認められた場合には、その学力に応じた別のクラスに編入されることになります。

−以下省略−

このような私たちの提言に先だって臨教審は、各方面から二万以上もの提言を受けて、この六月に第一次答申を発表しています。私たちの提言が、今後どのような形となって反映されるかについては興味のあるところですが、とりあえず、ここに意見を述べさせていただいたことを機に、県内の英語教育関係の方々からのご意見等を、福島県教育センターの私までおよせいただければ幸いに思います。

 

先生をかこんで

先生をかこんで

 

 

 


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