教育福島0107号(1985年(S60)12月)-046page

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わかりやすい教育法令

校則

 

校則とは……

学則と生徒心得の関係は……

 

一、はじめに

 

一、はじめに

 

校則は、学則をはじめ生徒心得、懲戒規程、教務内規等各学校によって様々な定め方がされています。

本年一〇月一八日、秋田市で開かれた日本弁護士連合会の人権擁護大会では、「学校生活と子どもの人権」と題してシンポジウムが行われ、校則と基本的人権との関係が一つの話題となりました。

今回は、児童生徒とのかかわりの中で、校則が法律的にどのような意味をもつものなのかをみていくことにします。

 

二、校則の法律的意味

 

1 公立学校は、県・市町村の設置する「公の施設」(地自法二四四条一項)ですが、この「公の施設」、従来の用語でいうと営造物について、その管理主体は、管理権に基づいて営造物利用の秩序を維持する に必要な限度において利用者を規制することができるものとされ、いわゆる営造物規制を定めています。

例えば県立美術館では条例施行規則を設け、開館時間を定めたり、また、展示物にさわったり大声をあげたりすれば係員によって館外へお引きとり願うということを定めたりしています。

そして学則等の校則は、公立学校における営造物規則の一つとして位置づけられます。

2 学校における営造物管理の作用は、一般の営造物におけるそれと比べてかなり強い形であらわれます。なわち、学校教育が児童生徒の教育及び人格育成活動という強い倫理的性格を有するものであることにより、学校の利用者である児童生徒は、学校教育の目的達成に必要な限度において、一般住民より以上に義務を課せられ、あるいは権利を制限されることになります。

3 私立学校の場合は、私法上の附合契約、つまり契約の当事者の一方である学校側が決めたことに対して他方の児童生徒が従わなくてはならないという契約であるとの考えから、規則制定権や規律権を説明するのが一般的です。

公立学校の在学関係も、右の私立学校と同じ契約関係をあてはめて考えようとする立場もありますが、いずれにせよ規則制定権や規律権が否定されるわけではないと解されます。

4 このことは、最高裁の判例でも確認されています。すなわち、昭和四九年七月一九日判決の「昭和女子大学事件」では、 「大学は国公立であると私立であるとを問わず……公共的な施設であり、……その設置目的を達成するために必要な事項を学則等により一方的に制定し、これによって在学する学生を規律する包括的権能を有する」としています。これは、考え方としては高等学校以下の学校にもあてはまるものと解されます。

 

三、おわりに

 

校則は、本来、児童生徒の規律ある生活態度を育て、正しい社会規範を身につけさせるという教育的配慮に基づいて定められるものです。このことから、校則によってある程度児童生徒が生活の中で規制を受けるのはあり得ることです。

その場合、校則が児童生徒の生活のどの面をどの程度まで規制するのかは、社会通念上合理的な、時宜に則した判断が必要であろうと考えられます。

 

質疑応答

 

問 校則の基本とされる学則と生徒心得や懲戒規程との関係は、どうなっているのでしょうか。

答 生徒心得等は、学則の細則としての性質をもつものと解されます。

前述した「昭和女子大学事件」の東京地裁昭和四二年四月一〇日判決では、生徒心得にあたる同大学の「生活要録は、学生手帳に記載され、学則の細則としての性質をもつ」としています。

なお、生徒心得等は、学則と一緒に生徒手帳に載っていることが多いようですが、学校内規として中学校や高等学校における生徒指導の基本的なよりどころとして大きな役割を果たしているものと考えられます。

また、学則は学校の管理運営などについて規定したもので、学校内規の主たるものです。本県でも、県教委規則で「福島県立高等学校学則」が定められています。学則に記載すべき事項は、学教法施行規則四条に定められ、学校の設置認可申請又は届出の場合には必ず学則を添付しなければならないことになっています。ただし、市町村立の小・中学校などの義務教育諸学校では添付しなくてよいとされています(学教法施行規則三条)。

 

 

 


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