教育福島0111号(1986年(S61)06月)-009page

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る雰囲気、若い教師の相談に乗り助言してやれる雰囲気、他の学級や学年の問題でも学校全体の問題として共に解決に立ち向かう雰囲気………等々、全教職員が日常的に、児童生徒のことで相談したり、情報交換し合ったりできる雰囲気が大切である。

このような雰囲気の中で、全教職員が同一歩調で学校・学級における相談活動を特に充実するとともに、児童生徒の中に入り、人間的な触れ合いを深め、悩み等の把握に努める必要がある。特に、いじめ、登校拒否の防止については、早期に具体的な指導の手だてを講ずること、その場限りの指導で解決したとしないで、一人の児童生徒であっても学校をあげて継続的な指導に努めることが大切である。

 

二、自浄力の育成を図る生徒指導

 

生徒指導というと、いつも教師から一方的に説諭されたり、校則を押しつけられたりするものであっては、本来の指導は成立しない。

自殺、校内暴力、いじめなどの指導に当たっては、学校生活のあらゆる機会を通して、自他の生命を尊重する心、他人を思いやる心、不合理に立ち向かう勇気を育てる指導に努めることが大切である。この場合、教師の信条や体験を心から語りかけることも必要である。

また、学校及び学級の自発的・自治的な活動を促し、児童生徒に使命感や役割意識を持たせ、責任ある行動がとれるようにする指導も大切である。

たとえばいじめの問題については、教師による指導のほか、児童会・生徒会等で、いじめ追放宣言、いじめ特集の学級新聞コンクール、いじめの状況のアンケート、いじめをテーマにした校内弁論大会、授業参観日における親子の話し合いなどが実施できるよう援助し、児童生徒自身の手による学校・学級づくりに取り組ませる必要がある。

 

三、生きがい感をもたせる生徒指導

 

児童生徒が生きがいを感じながら学校生活を送るためには、好ましい友人関係に支えられ、あらゆる場や機会で成就感や満足感が得られるように工夫し、個々の能力や特性を生かす指導を進めることが大切である。だれでも長所と短所をあわせもつものであるが、短所を改めさせようとするだけでなく、その子の良さを認め励まし、活躍できる場を与え、学校・学級になくてはならない存在として意識づける必要がある。

したがって、教科学習の状況だけで"できる""できない"というレッテルを張らないで、その子のもつ人間的な徳性(優しさ、ねばり強さ、器用さ、奉仕性、責任感など)を見い出すとともに、目標をもって将来を展望できるような指導、援助に努める必要がある。自分が認められている、役立っているという所属感・充足感が満たされれば、不登校や授業離脱などは考えられないのである。

 

四、自己指導力を高める生徒指導

 

自己指導は自己実現へ向けての過程でなされるものである。この自己指導力を高めるためには、自己の生き方を決める力を育てることが必要であり、それは児童生徒の主体的・自主的活動によって可能となる。そのためには、教師が教え過ぎたり、せっかちであったり、放任であったりしてはならない。

自己指導力を育てるということは、この時、この場で、どのようなことが正しいかを自ら判断し、自ら行動する力を育てることである。そのためには、児童生徒が自分のあり方、自分たちのあり方を決め、それを実行し、責任をとる、という自己決定の機会や場面を用意してやることが大切になる。自己決定の機会や場面で活動していく過程で、自己実現を図りながら、周囲の人たちの主体生を尊重する行動はどうなければならないかを学ばせていく必要、がある。

 

五、保護者や地域に開かれた生徒指導

 

生徒指導を効果的に進めていくためには、学校が家庭や地域社会との連携を一層深めることが大切である。

学校は保護者に学校の実情や生徒指導の方針、内容を十分理解してもらうとともに、学校への要望なども十分に聞き、学校と家庭が一体感をもって指導に当たる必要がある。そのためには、学校をもっと気軽に出入りできるところ、先生と心を開いて話し合いができるところにする必要がある。

特に、問題行動の動向や対策については、問題が大きくなってからPTAに協力を求めたり、関係機関にかけこんだりするのではなく、日ごろから連絡を取り合い、早目に指導に当たる必要がある。学校で解決しようとして問題をかかえ込んでしまったために、かえって解決を遅らせてしまうことがあることに留意しなければならない。

小中学校間の連携についても形式化しているきらいが見受けられるので、内容、方法等について共通理解を図り、一貫した指導に努める必要がある。

また、公民館等が実施する青少年健全育成の行事には、学校としても全面的に協力し、進んで児童生徒を参加させ、異年齢集団における人間関係を学ばせることが大切である。その際、教師も指導者あるいは協力者として積極的に参加することが望まれる。

次に紹介するのは、生徒指導研究学校の研究内容である。各学校の実践の参考にしていただければ幸いである。

 

 

 


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