教育福島0111号(1986年(S61)06月)-010page

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「主体的に行動できる生徒を育てる生徒指導」

一学級の指導を中心に−

平田村立蓬田中学校

 

一、主題設定の理由

 

(一) 生徒指導の今日的課題

現代っ子の特質を挙げれば、物を大切にせず、勤労意欲に欠け、欲求不満に対する耐性に乏しく依頼心も強い、と言われている。急速に進歩する社会の中で、都会の生徒、山村の生徒を問わず、いまほど「人間性回復の教育」が叫ばれている時はないと言えよう。本校の生徒にしても自発性や耐性の欠如などが見られ、例外ではない。

 

(二) 地域の実態

本村は純枠な農山村であり、大部分が兼業農家である。出稼ぎも多く、経済的な諸問題から派生する様々な問題が生徒に与える影響は少なくない。学区内には二つの小学校があり、入学生の大部分はそれらの小学校からであるが地域格差はほとんど見られない。生徒の通学距離は長く、二キロメートル以上の生徒が六割を越える。

 

(三) 本校教育目標と生徒の実態

本校の教育目標は、「生命を大切にする生徒」「目標にむかって最善をつくす生徒」「友情と奉仕を尊ぶ生徒」である。

生徒は純朴で明るく、教師の指導を素直に受け入れ、仕事も係活動も指示されれば懸命に行う。反面あきらめが早く、自主的、積極的に学習や仕事に取り組む姿が少ない。また、都市部生徒に対する劣等意識も見られる。

以上のような実態から、「一人一人の生徒が集団の中で所属感を抱きながらあらゆる活動に意欲的に取り組み、進んで行動したり、問題解決ができるようにする」ことが必要であるという認識のもとに、標題のような主題を設定した。

 

二、研究主題についての基本的な考え方

 

(一) 主体的に行動できる生徒像

問題の所在に気づき、正しい判断のできる生徒・ 目標をもち、計画的な生活が送れる生徒 ・自分の役割を自覚し、責任をもって成し遂げる生徒積極的・持続的・協調的に問題に取り組む生徒 ・やろうという意欲に燃えている生徒 ・反省ができ、明日への前進をめざす生徒

以上の六つをめざす生徒像とした。

 

(二) 生徒の育成

生徒は本来、「能動的、主体的な存在」である。従って、主体的に行動させるには、単なる指示や命令だけでは不十分である。そこで、意図的で計画的な教師の指導助言が、生徒の主体生をゆさぶり、教師と生徒がともに努力しようという共感関係をつくりあげて「やる気」を起こさせ、その意欲に支えられた実践により自己を高めていくこと、これを「生徒の育成」とよぶことにした。

 

(三) 学級の指導を中心に

研究をできるだけ焦点化するために、「学級の指導を中心に」実践を進めていくことにした。「学級の指導」とは、「学級指導」「学級会活動」「道徳の時間」及び「短学活」「給食指導」等、学級集団を母体として、学級担任が主として行う教育活動とおさえた。

 

三、研究仮説

 

学級の指導を中、心に、生徒一人一人が身につけるべきことを学びとらせ、相互理解、相互指導を図る「話し合い活動」を継続的、段階的に深めながら、具体的な活動場面での援助を繰り返し強めていけば、生徒の意欲は増し、主体的に行動できる生徒が育つであろう。

 

四、実践の概要

 

一人一人の生徒が主体的に行動できるようになるには、まず毎日の授業や日常生活が正常に進められることが基盤となる。学級で身につけた力や生徒自身の特性は、諸活動の中ではじめて生かされると考える。本校では、「生徒一人一人を正しく理解し、授業で基本的なことがらを身につけさせ、係活動を含む諸活動を自主的に進めさせていく」というサイクルの中で、指導援助を計画的・持続的に強めていくことにした。従って組織的にも「生徒理解部」「授業部」「日常指導部」に分け、それぞれの部門ごとに実践した。以下紙数の関係で代表的な実践内容のみを述べたい。

 

(一) 生徒理解部

(1)研究の見通し

生徒一人一人について、客観的で詳細な情報を各種検査、調査、観察、生活の記録ノートなどの資料によって把握し、一人一人の特性を理解し、人間的に尊重することに努めていくことにより、教師と生徒の人間関係は深まると考える。また、このような関係のもとで全教師が連携し、教育相談を促進し、一人一人に即した指導援助を積み重ねていけば、その過程の中で自己を見つめ、自ら問題解決に向かう姿勢が育成されると考える。

 

 

 


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