教育福島0111号(1986年(S61)06月)-037page

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前時では、子いもの中に豊富にでんぷんが含まれていることを知り、植物の生産性に驚きを持った。本時では、でんぷん生成と日光との関係をとら、えさせる前段として、「子いものでんぷんは、どこからきたのだろう」という疑問を大切に取りあげ、でんぷんの生産されたところに焦点化させる。

2) 子ども相互のかかわり合いと追究過程への位置づけについて

ア、「子いものでんぷんは、どこからきたのだろう」という課題について、一人一人に自分の考えを持たせ、理由づけをして発表させる。その後、一人一人の考えのずれを見つけ話し合う場を設定する。

イ、確かめる方法を考える場では、グループ内で協力し合って、推論にしたがった検証方法を考えさせるようにし、整理させたあと学級集団へ発表させる。

3) 理解の深化について

ア、既習事項や実物を通し推論できるようにし、絵などをもとに推論したことが言えるようにさせる。

イ、推論したことを確かめる方法は、友だちと十分に検討しあって多様なものがでるよう考えを練り上げさせ画用紙にまとめさせる。

単元に関する考察

○ 本単元の学習を通し、児童はでんぶんの存在、葉ででんぷんが生成されることなどに、非常に驚きを示した。身近にありながら、改めてじゃがいもを見直す目を持てたのは、長期にわたる栽培学習の成果であり、直接的にはたらきかけることのできる地域素材の有効性が実証できた。

○ 授業仮説の検証の手だてとして、活動の明確化、子ども相互による追究過程・理解の深化を指導過程に位置づけていったことにより、自分たちの考えを出し合い、楽しく話し合う姿や、対立意見を述べ、互いに考えを練り上げていく姿が見られた。

○ 指導計画での内容の順次性は、さほど問題はなかったが、栽培計画と学習計画を綿密に検討して実施する必要があった。地域性によるおそ霜による被害など、気象条件も十分に考慮し、展開してゆくことが大切である。

(4) 単元における成果と問題点〈成果〉じゃがいもの栽培学習を通して、自然を愛する心、科学的に自然を見つめる目を育むことができ、地域素材を活用する有効性を十分に確認することができた。〈問題点〉まとめの時間の十分な確保、自己の変容を意識できるような評価のあり方などについての研究を深めてゆく必要がある。

 

三、研究の成果と今後の課題

 

(一) 研究の成果

 

(1) 教師の変容

1) 地域の自然の教材化を図り、児童の活動を無理なく連続させるための単元の構成を工夫する努力が見られるようになってきた。

2) 児童の身近な自然を教材として観察させ、自然に対する興味を深めさせたり、自然のきまりを見つけ出させたり、自然に目を向けるための努力が根気強く行われるようになってきた。

3) 児童の学習意欲を高めるための教材の開発、提示のし方など学習の動機づけに工夫が見られるようになった。

4) 児童の考えを大事にし、児童が十分に活動する場を与えるなど主体的に活動できる場の設定に工夫が見られるようになってきた。

(2) 児童の変容

教育目標「よい子」、研究主題「すすんで学習する子どもの育成」の視点から、次のような子どもの姿を見ることができるようになってきた。

1) 学習への取り組みが変わってきた。

ア 多様な発想のもとに、自分の考えを大切にし、問題を解決しようとする子どもがふえてきた。

○ 観察結果の記録などを大切にし、記録をもとに自分の考えを生みだす子どもがふえてきた。

イ 自然への働きかけが豊かになってきた。

○ 学んだことをもとに、地域の自然へ発展的なかかわりを見せる子どもがふえてきた。

○ 日常生活の中における事象に疑問や問題をもって取り組む子どもがふえてきた。

○ 自然に親しんだり、動植物を愛護し、親しむ態度が見られるようになってきた。

ウ 学習の素材を地域に求めた学習では、繰り返し対象物にはたらきかけることができ、理解も地にっき、わたしたちが願っている姿に近づきつつある。

 

(二) 今後の課題

 

(1) 子どもが生き生きと活動し、追究の喜び、満足感、成就感を味わう場の構成のあり方。

(2) 形成的評価の活用のあり方と連続的な活動のさせ方。

(3) 他教科や各領域における地域の素材の教材化とその実践化。

 

 

 

 

 


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